義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

#727-740 物体の・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌> 物体のごとく伸びいる脚四本工夫は午を深く眠れり 被写体となりて砂丘に立つ駱駝燥けるまなこの視線を逸らす 観光バスに調子外れの歌唱う男の心本日晴天 地の窪みに残る雨水濁りいてそこを世界と遊ぶ水蜘蛛…

#713-726 こと切れし・・・

手製の松本みさ枝歌集(三) <短歌集(二)の掲載を終えて>昨日までに、義母の手作り短歌集(二)に蒐集された280句の掲載を終わりました。これらの短歌は平成7年(1995年)の春から夏に詠まれたものと思います。引き続き今日からは短歌集(三)に…

#701-712 信じられぬ・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#701-712 信じられぬ思い出ひとつ夫征きわれ牛使いて代掻きしこと 視力ある無上の喜び身に沁みて今日を支える本を選りつつ 朝よりの視界の跡をなぞりゆく昨日と異なる何かがある筈 表戸は施錠のままに昏れん…

#691-700 割れ硝子・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#691-700 割れ硝子思わぬ光を陽に反し光を持たぬ吾が眼を射せり 如月の天を荒びて吹く風の絞る雫か頬打つ氷雨 水底に眠る小石に寝返りを打たせて湍る雪の谷川 丸木橋渡る童は風の子吹かるるごと枯れ野に消ゆ…

#681-690 ビラに笑む・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#681-690 ビラに笑む瀟洒に装う美男美女燃やせば炎となりて天界を行く 目に馴染みの山を見上げ五十年やさしきものはことばを持たず 日月もとどかず深く死者眠る土を犯して雨降り沈む 夫婦とは元は他人と人は…

#671-680 わくら葉を・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#671-680 わくら葉をかぶれる魚も抱くならん冬の川面の蒼の窮まり ぐるぐると感情線は裡めぐり胃のあたりより哀しみは涌く 独りにも新年は来る隣家の餅搗く音にむらぎも冴ゆる 桧葉は桧の匂いの音たてて爆ぜ…

#661-670 ゆく先を・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 ご朱印 <今日からの写真> 平成14年7月に訪れた、関西花の寺 第6番 隆国寺の写真を掲載いたします。 公式ホームページは http://ryukoku-ji.com/ を参照ください。 <義母の短歌>#661-670 ゆく先を持てるごとくに蜘…

#651-660 へだてなく・・・

関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#651-660 へだてなく太陽は輝り野良猫は手脚ほどきて眠り呆ける 聞き馴れぬ獣の呻き闇をゆく応えなき人の棲む彼方にて 争いて尖れる声もややに笑む独りにあらぬ若夫婦の会話 売り出しのスーパーに来て漠然と…

#641-650 瞑る眼に・・・

関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#641-650 瞑る眼に己が自在の古家は累々と起つ低屋ながらに 此の影が我のものかやすんなりと月を背にして長きが愉し 天を指す銀杏黄葉の真盛りにゆらめき靡く落ち葉焼く煙り 明けきらぬ窓に鴉のしゃがれ声か…

#631-640 開店を待つ・・・

関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#631-640 開店を待つ駐車場広々と水蜘蛛の遊ぶにわたずみを持つ 吹く風のうねりに生るる彩山の折り伏し川を越えて迫り来 売り出しに満車となりいる駐車場ここには枯れ野の匂いがしない うるおえる花も実もな…

#621-630 喜びも・・・

関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#621-630 喜びもはた悲しみも稀まれに田の字の型の部屋ぬち平穏 人は皆いづくを指すや渋滞のなかのひとりに我が行く方も 電線も途切れてここより墓参道風渉る音父母の呼ぶ音 我が魂の浮遊しはじむ涙腺の弛ま…

#611-620 聞く耳・・・

関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#611-620 聞く耳持たねば言葉もただに音に聴く人の背かなしくてならず 羽をもて撫ずらるるごときよ独り棲む我れに寂しくなきかと問うは 遠足に人と離れて妹と貧しき弁当食みしを忘れず 饒舌の女が聴き手に廻…

#601-610 コトコトと・・・

関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#601-610 コトコトとおくらを刻む俎板のかそか凹むにもひとり馴染みて 梅干しの紅にじむ白飯にたまゆら浮かぶ父の弁当 我がともす明かりの破片窓にこぼれあるかなきかの温み地を這う 下校の児乗せやればはな…

#591-600 並び起つ・・・

関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#591-600 並び起つ若竹の葉を縫うひかり夏の青さに泪さしぐむ 横切れる仔猫不意にふりかえる戻る巣のある確かなまなこ 此の峡に命与けて悔ゆるなし耳朶に親しき瀬音ひびきて 手をあげて便乗したる軽トラック…

#581-590 学ばせたしと・・・

関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 御朱印 <今日からの写真> 平成14年7月に訪れた、関西花の寺第5番高照寺の写真を掲載いたします。 公式ホームページは http://koosyoji.sakura.ne.jp/ を参照ください。 <義母の短歌>#581-590 学ばせたしと呟くごと…

#571-580 かたつむり・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#571-580 かたつむり行きつく先を住まいとし振り向きもせずわれも独りぞ 傾く樋たぎり落つ雨足のいよいよ侘し暮れてゆく軒 旬という言葉を添えて差し出す産毛の露の乾かぬわらび 吹く風に背中衝かれて戻る道…

#561-570 梅雨晴れの

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#561-570 梅雨晴れの厳しき照りにしとどなる汗の短駆の影を歩ます つづまりはひとりの家に安らぐと雑踏ゆ戻り湯桶に流す 音もなく降る雨のなか紫陽花の大きにかくれ人等うごめく もの言わぬ人を肌えに抱く夢…

#551-560 二瀬川に・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌> 二瀬川に脚濯ぎたる鬼の子もあるべししんしんと渓流は澄む 杉の秀に昼蛍かと光る露こえ登りくる天の岩戸に 谷深き天の岩戸に人声のたちてさざめく泉ならなくに 夜の更けに無言電話かけてくる侘しき人よガム…

#541-550 皇太子・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#541-550 皇太子ご婚儀の午を墓に来て華やぎに遠くひとり草引く 柚子花に万匹の蜂群がりて羽音の唸り棒状に落つ からすの芋鴉の豌豆からす瓜嫌な鴉に人らは近き O型の貴方はけろり天国で酒もたばこも自由で…

#531-540 投稿の・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#531-540 投稿のハガキ一枚ためらうにあっさりと呑むずん胴ポスト 誘わるる如く来たりてぽつねんと座るベンチの冷え固かりき おんぶに抱っこ纏りつきし孫達が囲みて言えり「おバァちゃんちっこい」 汝の齢には…

#521-530 農の行く・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#521-530 農の行く先かたみに論じらるるなか存在感なく身を置きており 新生児いまか生まれるがに春蘭の柔毛の蕾土持ち上ぐる とみこうみ腰をかがめて見極める花びらの芯ささやき持てり 枯れてゆく脈とる医師…

#511-520 風の径・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#511-520 風の径さけて憩える陽溜りに誰待つとなく刻流れゆく ウインドの己が姿に眼を反らしこごみて探す春の花鉢 ふと想う下降の終の安らぎかエスカレーターに運ばるるとき 孵らざる卵を抱きて瞑りおり東天…

#501-510 温風機・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#501-510 温風機切ればたちまち襲いくる寂涼に騒だつ耳底の声 籠るにもほとほと飽きて冬日中素手のしびれるまでを草引く 一尺の糸も無駄なく使いたりし七十年を反古には出来ず 腹筋の躍動おろかこみあげるこ…

#491-500 川岸の・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#491-500 川岸の拓かれて陽を浴ぶ幾つ岩なかに寄りあう夫婦岩あり 水底に尺余すなる大鯰ゆらり影曳く寒中の泳 終駅にも似たる吾が背かかたえより旅人のごとく子等発ちてゆく 三戸五戸小聚落のちりぢりに一戸…

#481-490 眺めやる・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#481-490 眺めやる峰のたたずみ唯ひそか四季を描きて彩は移ろう 堆く掻き寄するわくら葉灰にして土に還さん緑にかえれ 外灯を透かしてみれば尚寒し闇に細かき雪降り止まず 月の径何やら駆けくる気配して動…

#471-480 為すべきを・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#471-480 為すべきをひとつ余して昏れなずむ窓にかそかなる焦りゆらめく 葉牡丹の紅に積む雪払いやり蕊より生きるる生気溢るる 育てたる馬鈴薯にあらず徒生えの摂理に実るを堀り上ぐ感謝 乙女とはまだよべざ…

#461-470 抱かれて・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#461-470 抱かれて帰りし幼の残し置く小さな靴の静かな存在 ひと足の歩みがなかに取り落とすふたつ転げし湯呑みが睨む 亡夫の席そのまま空けて変うるなしテレビ斜めにひとりみている 夫ありてうからはらから…

#451-460 闇に灯る・・・

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#451-460 闇に灯る膝の車の免許証村田教官厳しかりしよ 彼の谷に三椏咲くと聞きしより登れぬ山の見えぬ花みる 竹藪に囲まる峡に竿売りの生業の声虚しく過ぎぬ 生くる身が今カルシュウム欲る故に常に好まぬ干…

#441-450

関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#441-450 この鎖外せば犬は真先に何を為すかとふとも思えり 指程の虫に逃げ出す幼子が靴音たてて蟻追いまわす 吾が棲みて子に戻れとは言い難し老いの昂ぶる事もなき峡 のうのうと意のまま生くる折りふしを逝…

短歌集(一)の掲載を終えて

義母の手作り短歌集(二) <短歌集(一)の掲載を終えて> 昨日までに、義母の手作り短歌集(一)に蒐集された432句の掲載を終わりました。これらの短歌は平成6年(1994年)の秋から冬に詠まれたものと思います。 引き続き今日からは短歌集(二)に…