#461-470 抱かれて・・・
<義母の短歌>#461-470
抱かれて帰りし幼の残し置く小さな靴の静かな存在
ひと足の歩みがなかに取り落とすふたつ転げし湯呑みが睨む
亡夫の席そのまま空けて変うるなしテレビ斜めにひとりみている
夫ありてうからはらから民宿に蟹食みし日のありひとり蟹焼く
降りしきる雪に視界のしんとして新聞配達の足跡も消ゆ
黄昏の雪を運び来啾啾と音なき夜を耳盲のごと
掌に受くる雪束の間に露となり帰らぬものがお指こぼるる
真蒼なる水の底辺に沈もれる芥のつぶやき我が独り言
流れゆく雲を写せる潦おさなの投げる石に砕ける
コーヒーの香り漂う厨変わらぬコースのパン皿運ぶ