義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

#2216-2220 喜んで・・・

福知山市三和町岼 渋谷神社 <義母の短歌>#2216-2220 #2216 喜んでばかりも居られぬ開発の都合で広らになりし里径 #2217 いねぎわの心のまほらにわらべうた唄うは母かはたまたわれか #2218 初夏の山傾く日ざしにきらめきの彩をたためり山も眠るか #2219 い…

#2211-2215 仏より・・・

福知山市三和町岼 渋谷神社 <義母の短歌>#2211-2215 #2211 仏よりわが目が喜ぶ水仙の黄に仏壇の明るむを見て #2212 くねくねによじれし心にコート着せアクセル踏めばわれは別人 #2213 空壜のラベル剥がして一輪の残り椿をひとりの華に #2214 「早く来な」わ…

#2206-2210 昼暗き・・・

福知山市三和町岼 光照山常楽寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2206-2210 #2206 昼暗き杉の谷径ひたひたと竹樋つたう山水の音 #2207 美しき空壜出窓の片隅に光を溜めて立つがかなしき #2208 カルシューム補充に食ぶる干エビの芥子粒程の目に刺されいつ #2209 餌…

#2201-2205 立ちみれど・・・

福知山市三和町岼 光照山常楽寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2201-2205 #2201 立ちみれど為さねばならぬ何もなしひとり通れるだけの雪掻く #2202 追儺の豆に追われて逃げる鬼でもいいわれと遊べや酒酌み合わん #2203 三月の予定の光るひとところ「あきこ先生来…

#2196-2200  賑わいの・・・

福知山市三和町岼 光照山常楽寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2196-2200 #2196 賑わいの後の虚しさ捨てにゆくビールの空缶あまりに軽し #2197 てのひらの水洩るごとく子等去りし畳に積まれし座布団の嵩 #2198 福寿草の株切り分けてわが臓器与えるごとく子に持た…

#2191-2195  ひっそりと・・・

福知山市三和町岼 光照山常楽寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2191-2195 #2191 ひっそりと春待つ昆虫眠りいる芒ヶ原に沁む夕明り #2192 春夏秋同じ服着て鳥追いし案山子の脚が今燃えつきる #2193 通行止めの文字むっつりと道塞ぎ陽は高かれど里径寒し #2194 万…

#2186-2190 かたくなに・・・

福知山市三和町岼 光照山常楽寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2186-2190 #2186 かたくなによろえるごとき石榴の実ふいに弾けてさらす真実 #2187 十三夜のやわき光りに誘われて十歩二十歩踏む柿落葉 #2188 山里が好きで綾部に腰据えしとノルウェー製のストーブ炊…

#2181-2185 咥え来し・・・

福知山市三和町岼 光照山常楽寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2181-2185 #2181 咥え来し柿の実転かし胸を張る鴉よ汝れもひとりぽっちか #2182 みみずかと一瞬思いし蛇の子の消えし草むら温とくあれな #2183 引力に逆らいガラス戸這い登る雨蛙の指生きものの指 #…

#2176-2180 大島ゆ・・・

福知山市三和町岼 光照山常楽寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2176-2180 #2176 大島ゆ男孫の土産椿油もったいなくて見ているばかり #2177 短足の蜘蛛の抱えるボールペン丸木の橋を渡る危うさ #2178 県名を北から順に寝ね際の脳に広げる列島の地図 #2179 ゆらり…

#2171-2175 血の絆の・・・

福知山市三和町下川合 宇麻谷神社 <義母の短歌>#2171-7175 #2171 血の絆の紐はゆるめになど思う咲くポーチュラカの色もさまざま #2172 ポーチュラカと揚羽とわれと絵の中の静けさにいる空は真っ青 #2173 五十㍍以内に人の気配あり声のかけらが木の間縫いく…

#2166-2170 夏百合の・・・

福知山市三和町下川合 宇麻谷神社 <義母の短歌>#2166-2170 #2166 夏百合の花びら抜け落ち魂のごとき雌蕊がギラリと光る #2167 釣り人の忘れてゆきし白タオル河原柳に揺れて夏去ぬ #2168 「おばちゃんがあんまり草をけずるから生きてゆけぬ」と野蕗が嘆く #21…

#2161-2165  横に這う・・・

福知山市三和町下川合 宇麻谷神社 <義母の短歌>#2161-2165 #2161 横に這う白煙しろ熊はた馬にそぞろ麒麟となりて昇れり #2162 青年期にいまし移らん子鴉のすんなり伸びしぬばたまの羽 #2163 大空の汗かと手に受く天泣の土まで届かぬ程の湿りを #2164 媼わ…

#2156-2160 鹿が獲れた・・・

福知山市三和町下川合 安照山新福寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2156-2160 #2156 「鹿が獲れた焼肉するから食べに来よ」お茶にでも誘うように男等 #2157 遠き日の夢が残っているようでラムネの空瓶捨てる気がせぬ #2158 助手席に買い物袋座らせて残生温しと言わ…

#2151-2155 またひとり・・・

福知山市三和町下川合 安照山新福寺 <義母の短歌>#2151-2155 #2151 またひとり孫が印度へ渡るという生水飲むな弾にあたるな #2152 竜の髭刈ればとびだす青い実が同じ青さの空をみている #2153 騙すなどゆめ思わねどわがともす点滅灯に蛍群よる #2154 猿の…

#2146-2150 争いの・・・

福知山市三和町下川合 安照山新福寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2146-2150 #2146 争いの絶えぬ地球を見下ろして手の打ちようもないお月さん #2147 鯉幟りも祝ってやれず生い立ちし息子の息子に良き嫁決まる #2148 八十年生きしが人生ばら色と媼言いけり頼もし…

#2141-2145 新世紀に・・・

福知山市三和町田ノ谷 八幡神社 <義母の短歌>#2141-2145 #2141 新世紀に向けて建てたるモダンな墓彼岸の陽射し浴びて明るし #2142 逢いみての後の便りに温みありときめき新たにまた読みかえす #2143 みずからに充ちて落ちしか瑞みずと枝下範囲に輪を描く椿…

#2136-2140 適齢期・・・

福知山市三和町田ノ谷 八幡神社 <義母の短歌> #2136 適齢期どこ吹く風と留学に婚の資金をはたく女の孫 #2137 ニヒリズムの息子が霊験あらたかと届けて呉れし足のお守り #2138 すっぽりと眠りに落ちし数分に死界のやすらぎ見たる気がする #2139 破れ蓮の茎…

#2131-2135 雪曇り・・・

福知山市三和町田ノ谷 八幡神社 <義母の短歌>#2131-2135 #2131 雪曇り三日の後の晴天に心はずみぬ逢う人がある #2132 何程の飢え満たせしや仔連れ猪みみずを堀りし大穴いくつ #2133 「此の空は俺のもんだ」と満天の星に手を振る息子の銀髪 #2134 夜の蜘蛛音…

#2126-2130 人を見ず・・・

福知山市三和町田ノ谷 八幡神社 <義母の短歌>#2126-2130 #2126 人を見ず昏れしひと日を絵になせばうす紫のやわらかき靄 #2127 ひらがなの文字ちらすごと鴉とぶ寒の日和の空透きとおる #2128 花ひらくたまゆらに会いし心地なりつけしテレビのあき子先生 #21…

#2121-2125 まく餌に・・・

福知山市三和町西松 天満神社 <義母の短歌>#2121-2125 #2121 まく餌に鴨も混りて群るる鯉飼われいるもののかなしき平和 #2122 降るやみと地より沸くやみ絡み合い窓にはりつくぬばたまの闇 #2123 「おふくろの顔もむずかしなったよな」子には届かぬ老境の憂さ…

#2116-2120 物の怪の・・・

福知山市三和町西松 天満神社 <義母の短歌>#2116-2120 #2116 物の怪の漂うごとき霧わけて葬りもどりの橋うつつなく #2117 秋のあわれさとりし貌のかまぎっちょ淋しすぎるよ枯色の羽 #2118 植木屋の好みに刈られし庭樹木の新芽は新芽の想いに伸びる #2119 …

#2111-2115 なめらかに・・・

福知山市三和町西松 天満神社 <義母の短歌>#2111-2115 #2111 なめらかに老いは来たらず逆縁の柩にさか立つわがばさら髪 #2112 子を生さず妻と二人の濃きひと世終えし弟幸せなるべし #2113 弟の意思なき双の指ほどき骨もおれよと一期の握手 #2114 旅立ちの…

#2106-2110 酔うほどに・・・

福知山市三和町中出 梅田神社 <義母の短歌>#2106-2110 #2106 酔うほどに貴方もこなたもなくなりて自治会長が叩かれている #2107 乾燥機低く唸れり秋祭り終わりし里のたゆき静けさ #2108 二度までも風雨に倒れしコスモスの咲かねば終れぬ花の小さし #2109 …

#2101-2105 枯れ葉にも・・・

福知山市三和町中出 梅田神社 <義母の短歌>#2101-2105 #2101 枯れ葉にもくすぶる想いのあるものか容易く灰になると限らず #2102 倖せはこの位で良しポケットに零余子一杯心が温い #2103 人といて水に油の孤独感ひとり草引く野に翳おとす #2104 定年を迎え…

#2096-2100 血も流さず・・・

福知山市三和町中出 梅田神社 <義母の短歌>#2096-2070 #2096 血も流さずバッタバッタと悪を斬る将軍吉宗今世にあらば #2097 手の泥をモンペにこすり捥ぎくれし日昏れのトマト熱溜めいたり #2098 逃げるなどとても出来ないかたつむりその道ゆくな車が通る #…

#2091-2095  「母ァ母ァ」と・・・

福知山市三和町中出 梅田神社 <義母の短歌>#2091-2095 #2091 「母ァ母ァ」と騒ぐな子鴉お前とていまにひとりで生きねばならぬ #2092 明日のなきアメリカ芙蓉惜しみなく燃す情念のほむらひとしお #2093 閣僚の顔ぶれ並ぶ新聞に蜜したたらせ白桃を剥く #2094 …