2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 飛べぬまで腹太らせて充ち足りる蚊の終を打つ我が掌の動き ゆるゆると廻る舞台も今し秋人も緑も衣かえゆく 高圧線楽譜にも似て空にあり小鳥の音符気紛れに飛ぶ 土なきに芽吹き子をもつ古馬齢の皺に明治…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 墓地に咲く紫桔梗咲きつきて空の青さに旅立ちゆきしか 蹲まる汗の背中に吹き溜りシャツ孕ませて過ぎる野風は 他所ものと構えて見つめる三毛猫の光る眸と居る人待つ刻を ラジオの楽流れる牛舎に腹這える…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 針持たぬ夜なかりけり縫い直し繕い物に余念なき頃 飼われいて時折り家出する猫の何を恋うるか野生のように お守りを成田不動の神域に戴きし亡夫御利益受けず 夾竹桃己れ育くむ陽を求め繁り逃れて丈高き…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 別れ告げドア閉まる音背に聞く裾這い上がる安堵と孤独 叩きたる蚊のむくろ見る掌に羽根も手足も数足りてあり 生き来しの異なり言いて棚下に級友と喰む白桃は甘し 昭和初期小娘の日当十八銭米一升は購え…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 掌に乗る程の蛇横切れり幼きものの命いとしく 底知れぬ溜息一つ漏れ出でぬ永遠の住居の墓碑は哀しき 夫逝きて離れ住む息の戸主代理残る幾とせ勤め切れるや 集いいる人は黄泉路の人ばかり醒めて跡方なき…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 降り続く雨に渦巻く濁流が潜没橋を呑まんとして猛る 野に慣れぬ汝は日陰のどくだみよ笠忘れるなと姑言いくれし 天地に母ある如く柔し雨一滴残さず土に透み入る 真夏陽に修羅の面みせ野焼きする男等の汗…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 待ちわびる夕立過ぐる如息は去りぬ一刻残る涼はありても 「エッ此れが竹の子なの」と街に住む孫の仰げる若竹の葉 水は澄み雲ゆるゆると尾根をゆく旅してみたき病む膝をみる 緑より生まれて緑に消えてゆ…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 疲れ曳き歩む野の道ひとつ蝶動かずにおり脚根平びて 長月の心のひだにかくれ住む秘め事はありひそと息吹ける ポンと鳴る音好ましく折る真竹抱えて藪の明るみてゆく 大海を小舟で漂う心地して櫓を漕ぐ長…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) ひとりとて眼あり耳あり腕もあり歩める脚あるシャンと立ちませ 昨日晴れ今日は曇りて明日知らず心の予報自らにはかれず 雲裂きて走る稲妻まなうらを貫く如き瞬の戦慄 用のなき田植靴なり火に入れて積み…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 帰らぬと知りつつ煮物ならべゆき何を夢みる親子ごっこか 夜気受けて路ゆくひとり案内する終わりの蛍吾れを伴う 採り込みし杏を知らずひよの来てつつくものなき枝葉をゆらす 幼名で呼びて消えゆく六十年…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 此れ程の人歩みいて我を呼ぶ声なき街の雑踏をゆく 掌の汚れ心の灰汁を流すかに蛇口にしっこくかざして洗う 諦める端から待ちぬ土曜日は車の着く音夜の更ける迄 長月を捲まず勤めし夫逝きて我に賜える年…
関西花の寺25 第1番観音寺(公式HPはこちら) さくらんぼ捨ててレモンをしゃぶりいる幼子の味覚はかれぬままに ダムの水激つ飛沫の真白くてたちまち澄めり峡の小霧に 触れし掌に破れ羽残して黒揚羽暗き緑に影吸われゆく 圃場整備に田の面追われし蛍火の一…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 花菖蒲あすは開かむ直立の蕾一途に天を仰げり 夕立の雨粒地表を走る時乾ける土が一瞬を匂う 庭の雪積もりしままに黄昏れて唇重く早く戸を繰る 施錠する雨の玻り戸に白き蛾の羽根打ちふるい灯にしたいよ…
関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 散弾のふりそそぐ如はじけ飛び雹音立てて地上をまろぶ 鉄塔から鉄塔へ張る線上を猿と紛らう工夫下れり 洗い髪梳きにつつ聴く落とし湯の乱れの調べ闇に吸わるる 初夏の陽は白く乾きて屋根に照る麦藁帽子…
関西花の寺25 第1番観音寺(公式HPはこちら) 髪染めて雀百までとつぶやけり残り少なき女を楽しむ 母逝きて写経せし亡父そのままに今心経写す寂しさ噛みしめ 孫といて病む脚忘れ縄跳びに入りし脚が土を離れず 農に明け農に終りし父母が夢にも野良着で在す…
関西花の寺25 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 大真面目に竹槍の稽古つけられし悪夢の時代の紙芝居わらえり 愛籠めて抱いてゆけり納骨の道に樒の白き花散る 透み通る明治の教えうちにあり我れ神風をうたがわざりし 爆撃を受けるがに逃げ散らう蟻を見てい…
関西花の寺25 第1番観音寺(公式HPはこちら) 春雷のとどろきゆける部屋隅に叱られし童の如く座れり 一握りの野蕗摘みきて煮つめおりそれで事足る暮らしと思う 地を這える薄き影なり脚曳きて淡陽が中を家の門入る 遠ち近ちに耕運機の音とどろきて農なき我…
関西花の寺25 第1番 観音寺 御朱印 <義母の短歌> 六人の子育てし媼脚萎えて老人ホームに臥すという哀し 積む雪にすべりまろびし校舎への坂急にして今も残れる 如月の半月高く懸る道冷気の肌刺しうつむきて帰る 棕梠の葉が杉木立縫う木洩れ陽に揺れてい…
手製の松本みさ枝短歌集(一)に記載の短歌から順次公開いたします。 白鷺の群れて舞い立つ秋の空友禅模様の絵を曳く如し 会話なき一日終わりて消す灯り闇に重たき秋の雨音 国道に小さき命果つるありハンドル切りて回り道する 後継者なく売りし田の代坪千余…
関西花の寺二十五ケ所 第一番 観音寺 義母(家内の母、松本みさ枝)の最初の手づくり歌集(三)の最後に、本人があとがきを書いている。このあとがきを転載して、義母の紹介とします。 あとがき(松本みさ枝 記) 平成四年五月、久後先生のお誘いを受け、樵…
令和3年12月5日、義母(家内の母)が98歳で永眠しました。 義母は平成4年から短歌を作り始め、綾部市の『礁 短歌会』へ入会、平成9年には馬場あき子氏主宰の『花林の会』に入会し、毎日、三十一文字の歌つくりに励んできました。 写真は義母が私たち…