義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

2022-01-01から1年間の記事一覧

#1996-2000 「カァー」と啼く・・・

福知山市三和町千束 大歳神社 <義母の短歌>#1996-2000 #1996 「カァー」と啼く鴉に「カァー」と応えやる鴉応えず首ふるばかり #1997 胸はりて歩むつもりをウィンドの意地悪硝子が猫背を映す #1998 来春は野に咲くがよい引き抜きし犬のふぐりの花をコップに #19…

#1991-1995 悲しみに・・・

福知山市三和町芦渕 王歳神社 <義母の短歌>#1991-1995 #1991 悲しみに忘却の帽被せしは歌知り初めし平成四年 #1992 起き出でて真夜に水呑む音立てるさびしきものか咎めるものなし #1993 晴天が三日続けばうかうかと全たき春の中に遊べる #1994 二度芋は向…

#1986-1990 みっしりと・・・

福知山市三和町芦渕 王歳神社(2016年正月) <義母の短歌> #1986 みっしりと闇を抱ける藪椿弾き出すごと花首落とす #1987 半日の畑仕事に満たされし心に疲れし脚がもの言う #1988 訃報欄真先に目をやる年令のあな痛ましや五十代あり #1989 思い出の中…

#1981-1985 幻の・・・

福知山市三和町芦渕 王歳神社 <義母の短歌>#1981-1985 #1981 幻の花となりゆく山百合を咲かせ続けるかそけき吉事 #1982 詠むことも花の手入れも絵空事斯かる虚ろな刻よ疾くゆけ #1983 足裏に隠るる程の溜まり水空青ければ青きを映す #1984 さりげなくケー…

#1976-1980 激しさを・・・

福知山市三和町芦渕 霧窓山廣雲寺 <義母の短歌>#1976-1980 #1976 激しさを隠さんとして色も香も失せたる語彙の木乃伊に付き合う #1977 華写すことなき姿見凝然と冷やけき部屋の一角に光る #1978 コーヒーはブッラクが好きトーストには少し焦げ目を七十三歳…

#1971-1975 母此処に・・・

福知山市三和町芦渕 霧窓山廣雲寺 <義母の短歌>#1971-1975 #1971 母此処に痩せることなく冬越すと吹く風ならぬ電話で子等に #1972 植え替えて忘るるわれの目に見えて伸びいる水仙春の驚き #1973 梢隠すひと葉も持たぬ裸木の泰然自若ゆらぐともせず #1974 …

#1966-1970 残りしが・・・

福知山市三和町芦渕 霧窓山廣雲寺(ドローンで撮影) <義母の短歌>#1966-1970 #1966 残りしがわれで良かりしあの人が米研ぐ姿思うだに痛まし #1967 病む人の苦しみ焦りに較べぶれば物の数にもあらずひとり居 #1968 「小母ちゃんの顔見に来たよ」青年の黄金で…

#1961-1965 一円玉・・・

福知山市三和町芦渕 霧窓山廣雲寺(臨済宗) <管理人の写真> このブログの頭には、かって訪れた関西花の寺25ケ寺と丹波古刹15ケ寺の写真を掲載してきましたが、昨日で終わりました。 義母の短歌はもう少し続きますので、今日からはかって訪れた福知山…

#1956-1960 無料にて・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第15番 観音寺 <義母の短歌>#1956-1960 #1956 無料にてお掃除させて下さいなど何を企む電話の向こう #1957 あの時に斯うして置けばと悔ゆる程ゆるゆる生きて来しと思わず #1958 咲くことを秋より告げて一向に変わらぬ水木の蕾目覚…

#1951-1955 大いなる・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第15番 観音寺 <義母の短歌>#1951-1955 #1951 大いなる煙突の吐く白煙の羽衣と見ゆまで空澄みわたれり #1952 人を焼く煙は斯くまで白からず火力発電の白煙切なし #1953 水槽に食足り動かぬ海魚どちそれで足りるか命の自在 #1954 水…

#1946-1950 瀬戸大橋・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第15番 観音寺のご朱印とご案内 <義母の短歌>#1946-1950 #1946 瀬戸大橋渡る約束果たせずに逝きたる人よ時効は来たらず #1947 枝たわむ沈丁花の雪払いやる後は自立に立ち上がるべし #1948 長大根ひょろり伸び立ちわたし等も花を咲…

#1941-1945 花の歌・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第14番 天寧寺 <義母の短歌>#1941-1945 #1941 花の歌読めば花咲く春畑に一足跳びにゆきて立ちたし #1942 石楠花の莟重たげにたゆたえりルーズベルトと名は付けられて #1943 石垣は頑と残れど石寄せし夫も積みし石工も亡き人 #1944 …

#1936-1940 抵抗もなく・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第14番 天寧寺 <義母の短歌>#1936-1940 #1936 抵抗もなく捨ててゆく夢幾つ生きゆく荷物は軽きがよろし #1937 繰り返す電光文字に飽きし頃待人現る慌てるでもなく #1938 テレビに見る竜の落とし子可愛ゆくて丹後の海のまたぞろ恋お…

#1931-1935 中天に・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第14番 天寧寺 <義母の短歌>#1931-1935 #1931 中天に支えもあらず照る月をわたしの外にもひとりやふたり #1932 うどん打つ己が姿を夢に見つ打ってみようか昔の杵柄 #1933 片割れの夫婦茶碗も湯呑みの疵も一切過去へ葬るべきか #193…

#1926-1930 落とし湯の・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第14番 天寧寺のご朱印とご案内 <義母の短歌>#1926-1930 #1926 落とし湯の仄かな湯煙溝をゆく用足りし後を汚水となりて #1927 自動ドア人を選ばず入れしめる感情なきもの又頼りなく #1928 今の世に厠を外に持てるゆえ夜空愉しむ特…

#1921-1925 近道の・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第13番 長安寺 <義母の短歌>#1921-1925 #1921 近道のつもりの山道怖かりき枝揺らせしは魑魅ならずや #1922 甘辛く煮上げし冬の茄子の味誰も居らぬに「おいしいねえ」? #1923 テレホンに契約なせしウォーカー三日坊主に終わらすまい…

#1916-1920 侘助の・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第13番 長安寺 <義母の短歌>#1916-1920 #1916 侘助の外の椿の名は知らずいずれか美女の名を持てるらし #1917 遠くみる稜線の向ういまははや近くて遠き故里の雲 #1918 嫁たりし日の忙しさの去来する夢に疲れて昼を眠れり #1919 かな…

#1911-1915 横穴の・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第13番 長安寺 <義母の短歌> #1911 横穴の乾ける土を塒とし出で入る小鳥の土色の羽根 #1912 埃被る辻堂の前車停め憩うに良けれ合掌はせず #1913 冬と春の移ろい交錯する中を疑うとせぬ花の一心 #1914 聞いているつもりが他事思いい…

#1906-1910  幾とせを・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第13番 長安寺 <義母の短歌>#1906-1910 #1906 幾とせを変わり映えせぬ庭に遣る視線の遊び長くは続かず #1907 物好きに橙の実をなめてみてその酢っぱさに刺されたり舌 #1908 花桃の枝嫋やかにしだれ伸び稚苗くれにし婆様逝けり #190…

#1901-1905 日照は・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第13番 長安寺のご朱印とご案内 <義母の短歌>#1901-1905 #1901 日照は狭き車中に集まりて冬の上着を脱がせて戯れる #1902 春一番雪巻き上ぐる壮観を声持て現す言葉を知らず #1903 子の去りし後に残れる惣菜を昨日の夢の続きのごと…

#1896-1900 薄情な・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第12番 清薗寺 <義母の短歌>#1896-1900 #1896 薄情な女と言うて下さるな忘れな残り世生きてはゆけぬ #1897 白蝶の舞い下りるかと思わせて牡丹雪降る恍惚と降る #1898 吊されしままの冬服はんなりと疲れを見せて二月逃げゆく #1899 …

#1891-1895  往復の・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第12番 清薗寺(せいおんじ) <義母の短歌>#1891-1895 #1891 往復の歩数千と四十歩に動くと見しもの春のぼた雪 #1892 血止め草地を縛る草引き千切る端より芽吹きゲリラのごとし #1893 三人子は三人でひとり便りなき息子の占める部…

#1886-1890 再建の・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第12番 清薗寺(せいおんじ) <義母の短歌>#1886-1890 #1886 再建の商店街を隠しいるビニールシートの包むもろもろ #1887 深刻な会話は要らぬ母と子が炬燵に向き合う此の世の浄土 #1888 続くものなければようやく温もりし風呂場の…

#1881-1885 否応もなく・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第12番 清薗寺(せいおんじ) ご朱印とご案内 <義母の短歌>#1881-1885 #1881 否応もなくすすみゆく用地買収斯かる事態にこそ欲しき夫 #1882 免許証バックに確かめ腰上げるガソリンは満タン空は快晴 #1883 安売りの卵幾百並びたち主…

#1876-1880 実現性・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第11番 白像寺 <義母の短歌>#1876-1880 #1876 実現性先づはなけれど窓側の席占めてゆく空の夢旅 #1877 象ある些細も残さず夜の来て昼と異なる安らぎにいる #1878 人ならば怒り出すべし自販機の戻すコインを再び三たび #1879 満天の…

#1871-1875 人間に・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第11番 白像寺 <義母の短歌>#1871-1875 #1871 人間になりたき鴉枝ゆらし十羽十色の声を降らせり #1872 怺え切れぬ泪のごとき露浮かせはらりこぼせし終の山茶花 #1873 零余子うましうましと読めば試食してみたくもあるか黒き粒つぶ …

#1866-1870 目前に・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第11番 白像寺 <義母の短歌>#1866-1870 #1866 目前に山あり川あり花あれど声持たざれば満たさるるなし #1867 笑い声不意に聴こえて振り向けば携帯電話に戯れる若者 #1868 白と黒はっきりさせねば進めざる性に疲れて深める孤独 #186…

#1861-1865 鉢に咲く・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第11番 石像寺のご朱印とご案内 <義母の短歌>#1861-1865 #1861 鉢に咲く白梅水泡と溢るるを友が家に見つ土欲るとみつ #1862 歌捨てなば何処に宿らむ吾が心冬蛍ひそけく息整える #1863 もがざりし柚子の実朽ちつつ草むらに汚れぬ粒…

#1856-1860 漬物に・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第10番 白毫寺 <義母の短歌>#1856-1860 #1856 漬物に白きご飯の美味しかりし過去を美化なす母恋いの泪 #1857 楽しむと来たりし街の四半刻耳が真先に帰路をうながす #1858 散り初めし紅梅仰ぎ思うなり滅びなき生きあらずと読みしを …

#1851-1855 石ころを・・・

丹波古刹15ケ寺霊場 第10番 白毫寺 <義母の短歌>#1851-1855 #1851 石ころを拾いて詰め置く袋まで噛み破られおり生きの厳しさ #1852 むくつけき男のごとき冬景色福寿草の芽がまだ貌見せぬ #1853 大江山の鬼に喰われし河守の地名は永劫わが裡にあり #185…