義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

カテゴリー:動植物(一)

関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺 手作り短歌集に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。 まず(一)巻に掲載された432首の内、一番多く(88首)が含まれるカテゴリー【動植物】に分類した短歌から順に掲載いたします。 <義母の…

短歌集(一)~(三)の掲載を終えて

関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺 <短歌集(一)~(三)の掲載を終えて> 昨日までに、義母の手作り短歌集(一)~(三)に蒐集された1020首の掲載を終えました。 下記に、短歌集(三)の最後に記載されている、義母が記載した「あとがき」を転記しま…

#1011-1020 湧きいずる・・・

関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺 <義母の短歌>#1011-1020 湧きいずるかたちなきもの歌い上げ解って欲しと強いては言わぬ 闇受けるかたちの三日月冷ややかに人の孤独を見透かしいたり 人妬む心湧かぬをうれしみてこれにて足れりと思うてもみる 怠惰にはつ…

#1001-1010 ひょろひょろの・・・

関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺 <義母の短歌>#1001-1010 ひょろひょろの毒だみの花白かりき咲くべく生れし石塊がなか 陽の下に晒せば浮き出る疵跡の焦せし鍋ははた戻り来ぬ刻 贈られしピンクのはんかちしげしげと大正の女戸惑いいたり 追うからは日高川…

#991-1000 埋め置きて・・・

関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺 <義母の短歌>#991-1000 埋め置きて忘れし栗の実探す程鴉の頭緻密にあらず 跳びたてぬまでに壁打ち障子打つ小さき命に背戸開け放つ 女三界に家なしなどと戯け言三棟の家屋我が持て余す 白梅の芯のあたりに春生れて陽差し…

#981-990 格別に・・・

関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺 <義母の短歌>#981-990 格別に金に執することもなく時折残高確かめいたり 食いつめてと言うにはあらず田はすべて処分なしたり許させ給え 「ひとり住み」思いもうけぬ現実に過去世の騒然また洵爛たり 寒からぬほどの風花無心…

#971-980 長の子の・・・

関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺 <義母の短歌>#971-980 長の子のわれを愛ぐしと祖父母父母寝かせも置かず抱きしと聴けり 大往生の際にわが名を呼びしとう父の手に成る書を軸となす 風媒の野蕗萌土に根をはれり流浪の民の住みつけるがに 気が付けばひと日…

#961-970 漬物樽・・・

関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺ご朱印 <今日からの写真> 平成16年6月に訪れた、関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺の写真を掲載いたします。公式ホームページは下記を参照ください。 www.kakurinji.or.jp <義母の短歌>#961-970 漬物樽無為に積まれ…

#951-960 被保護者と・・・

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 <義母の短歌>#951-960 被保護者とならぬ終焉迎えたき願望はあり結果は知らず 積み上げし苦労の実り見ぬ人に生きて泪をこぼし参らす 噛み合わぬ話題はぽんと抜くビールの泡に紛らす術も知るなり 足裏の交互に地を踏むと言…

#941-950 羽根たたみ・・・

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 <義母の短歌>#941-950 羽根たたみ歩む鴉の悠然とひとあしごとにうなずきにつつ 彼岸花葉と花倶にある日なき斯かる厳しき愛もあるべし 大切な封書ぱくりと呑むポスト此れより先は汝が責任 ひと組の息子の肌着まず洗う古き…

#931-940 身に重き・・・

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 サツキを花衣とした涅槃仏像 <義母の短歌>931-940 身に重き来しの歳月心処に氷室抱くも峡捨てがたし 寝て起きていずれひとりの心の臟胃の腑を促し厨に立たしむ 幽明の境をながく彷徨える老い否看取りの友に泪す 改めて花…

#921-930 哀れとも

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 サツキを花衣とした涅槃仏像 <義母の短歌>921-930 哀れともたくましきとも生ごみの袋ひきずる夜の気配の わがたつる音にはあらぬ厨事一泊の娘ねぎきざみいる 拾い来し蝉殻ひとつ机の上に滅びしものも影を持つなり 残りも…

#911-920 それぞれの・・・

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 <義母の短歌>911-920 それぞれのうつし身庇う傘の群れあるいは闇にうごめく茸 言わずとも聞かずとも通じ合う心血は水よりもまさに濃ゆかり まるまりて朽葉も寒さ厭うにか身を寄せ合える日向の窪み 押し黙る唇のごとき冬…

#901-910 山住の・・・

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 <義母の短歌>#901-910 山住のまなこを洗う波頭浜に届かむ際を砕ける 波被く沖の小島の二つ三つともる灯もなく闇に沈みぬ トンネルを抜けるとそこは雪国と小説もどきの奇声を上げる 温めし楽しみひとつ過去となる疲れを土…

#891-900 明日を待つ・・・

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 <義母の短歌>#891-900 明日を待つ刻を埋むに長きかな洗車乾きてまだまだ昏れぬ あるがまま低きに向きて水はゆく逃げ場を持たぬわが冬籠もり 万両の蒔かぬに数多の実を持てる梅ヶ枝がもと冬を明るむ 折り紙の鶴教えよと訪…

#881-890 月末の・・・

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 <義母の短歌>#881-890 月末の支払い終えて嵩低き財布にほっと息吹きかける 泥のつく軍手脱ぐ手のほの温し庇われいると束の間思う 回覧板まわす隣家に営みの構図のごとき掃除機の音 谺なす犬の遠吠え尾を曳きて気寒き夜…

871-880 狐花・・・

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 <義母の短歌871-880> 狐花朽ちて丹波の霧ふかし棘も実もなく日々是好き日 耕して土なる色を取り戻すひといろにしてこのやさしさは 隠れ棲むごとくひっそり墓地浄め翳りそめたる野の怪戻る 諸もろの芥積み上げ放つ火に焔…

861-870 いま少し・・・

関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺 ご朱印 <今日からの写真> 平成16年6月に訪れた、関西花の寺25ケ所 第8番 應聖寺の写真を掲載いたします。公式ホームページは下記を参照ください。 hana25.jp <義母の短歌>#861-870 いま少し歯に衣きせて物言えと…

#851-860 食欲は・・・

関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺 <義母の短歌>851-860 食欲は思案の他にて欠かすなき飲食されど美食にあらず 滅びえの水吸い上げてなお紅しいまこぼれんばら妖艶に 過去ひとつ葬り去るがに夏衣押し入れの闇に冬を眠らす 欠け皿に似たるか我が生き使うな…

#841-850 感情の・・・

関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺 <義母の短歌>841-850 感情の脱皮なすがに泣き喚く幼なを黙らす蜻蛉のまぐわい 土も木も久びさの雨むさぼりて酔うにかあらん揺れて傾く なかなかに逃げては呉れぬ蛇のごとき残暑が不意に背向けたり ためらいてひとりし入…

#831-840 騙しきれぬ・・・

関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺 <義母の短歌>#831-840 騙しきれぬ己が心をなおだまし闇に紛れて眠らんとする ぬるま湯にどっぷり浸かり憂きことを聴き留めし耳ねんごろに洗う わが住みてこの家のいのちの灯はともり軒の花鉢季を違わず 思いきり四肢を伸…

#821-830 嫁ぎ来し・・・

関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺 <義母の短歌>821-830 嫁ぎ来し荷物のひとつ花柄の羽織着物の醒めざる眠り 見えぬ目の視線のずれを吾が受けて濁れる泪に言葉を失う とりもちのねずみもわれも騒然たりこの家の小さな事件のひとつ 手を合わすたまゆらよぎ…

#811-820 繭糸の・・・

関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺 <義母の短歌>#811-820 繭糸のほぐれゆくごと唇に記憶の底より湧きいずる軍歌 保健所に連れ去られゆく三匹の捨て犬酷似の貌持ちいたり 憚らず叩けるものあり息荒げ打ちこむ杭のゆがみて起てり なまなかに本音を吐かぬ性な…

#801-810 容赦なき・・・

関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺 <義母の短歌>#801-810 容赦なき雨に盛りを失いし牡丹挫折の彼の日に似たり 春の雨したたかなれば峡川の濁りにごりて底辺を見せず 引く草の見える間は戻るまじ得体の知れぬ日昏れの泪 連休に植えられるべく水張田の粛とし…

#791-800 行き止まりの・・・

関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺 <義母の短歌>#791-800 行き止まりの聚落昼を眠るがの空気ゆさぶる乳牛の声 木瓜の棘指にするどし大切な人病み給う痛みを刳る 乾電池変えれば活きいき刻きざむ時計のようにはゆかぬ吾が脚 熱湯に蒟蒻ふるわせ牛蒡そぐ戻…

#781-790 夜半の水・・・

関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺 <義母の短歌>#781-790 夜半の水のみど貫く冷たさを寂しむまでは考えるまじ 悲しみの塊のような芥袋固く結えて火中に投ず せつなげに闇ふるわせて啼きめぐる恋の季節を限られて猫 柚子の葉のひそかに抱く残り実に容赦も…

771-780 物置に・・・

関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺 ご朱印 <今日からの写真> 平成14年7月に訪れた、関西花の寺25ケ所 第7番 如意寺の写真を掲載いたします。 公式ホームページは こちら を参照ください。 <義母の短歌>#771-780 物置に仕舞うと積みて三日経つダン…

761-770 縺れあい・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#761-770 縺れあいコスモスの咲くひとところ混沌の世の華やぎに似つ 溜糞を橋の真中に憚らぬ闇にゆらいで来たる狸は 夫とは終生我の楯なるを疑わずいて愚かにひとり ふうわりと眠りに落ちんたまゆらに投函忘…

751-760 老鴬と・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#751-760 老鴬と呼ばせてなおも澄む声の斉藤史女史然り澄むならん 「死んだなら俺は泣くぞ」とエンジンの音に紛れる息子の言葉 仏との絆次第にふんわりと飛行機雲の末尾に似たり なりゆきのままに育ちし子に…

741-750 焼石にも・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌> 焼石にも水沁むときのあらんかと衰へ知らぬ雑草に挑む 水槽に額押しつける髭男魚の頬桁が笑ったような 六月の厨明るしほつねんと乾きがちなる俎の影 湯上がりのビールに重き瞼閉ず晒す胸処に出ずる泪は な…