義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

#2371-2378 開発に・・・

福知山市三和町菟原中 影清稲荷神社 <義母の短歌>#2371-2378 #2371 開発に裂かれ赤肌さらす山哭く夜あらずや冬はことさら #2372 開発に三たび移転の六地蔵こたびは屋根ある祠得給う #2373 鉦鳴らし今日のあれこれ告げおれど応えかえらば肝冷ゆるべし #2374…

#2366-2370 芋の葉・・・

福知山市三和町菟原中 影清稲荷神社 <義母の短歌>#2366-2370 #2366 芋の葉に宿る朝霧新しき今日を映して光をかえす #2367 雨上がりの舗装路ふみし泥靴の跡アリバイのごとく残れり #2368 こぼしたるミルクに寄りて動かざる蝿の恍惚見逃して置く #2369 「おば…

#2361-2365 難民の・・・

福知山市三和町菟原中 金昌山龍源寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2361-2365 #2361 難民のごとくダンプに積みこまれ朽ちゆく外なき農機具見送る #2362 盆明けの心の屈折もてあましがらんと広き夜空仰げり #2363 上向いて歩けば小石にけつまずく俯きゆけば明日が…

#2356-2360  轢死せる・・・

福知山市三和町菟原中 金昌山龍源寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2356-2360 #2356 轢死せる蛇を包みて道脇に寄せいる人の祈りのまなこ #2357 揺れたわむ竹に混じりてそびえ立つ一本杉の孤独を愛す #2358 疎開の子呼び戻すごと荒れ畑耕し植えゆく秋の草花 #2359…

#2351-2355 太陽の・・・

福知山市三和町菟原中 金昌山龍源寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2351-2355 #2351 太陽の分身おのおの窓に受け湧き出るごとき対向車の列 #2352 温感なき鈍光ともるトンネルの長きを走る背寒かりき #2353 くちなわに今ある喜びあるらしき背筋躍らせ草むらに消ゆ…

#2346-2350 人の意に・・・

福知山市三和町菟原下二 鹿倉山成満寺(浄土真宗) <義母の短歌>#2346-2350 #2346 人の意に添いて生くるを良しとせず抗うでもなくひとり草引く #2347 先ず健康鰯の頭も信心からドリンク飲みて歌会に急ぐ #2348 利心のうするるとは言え時折は小首傾げる人生…

#2341-2345 花吹雪・・・

福知山市三和町菟原下二 鹿倉山成満寺(浄土真宗) <義母の短歌>#2341-2345 #2341 花吹雪地に再びの華置くに雨よ叩くな轍よ踏むな #2342 恋の時季忘れし猫がぼってりと太りし首の鈴鳴らしゆく #2343 するめいか何辺の浜に干されしや平たくなりてわが手にさ…

#2336-2340 杖なしに・・・

福知山市三和町下二 鹿倉山成満寺(浄土真宗) <義母の短歌>#2336-2340 #2336 杖なしに歩める喜び白蓮が呼んでるようで十歩二十歩 #2337 いくばくは美化してつなぐ追憶の連想ゲームに一喜一憂 #2338 身の用の足りる間はひとり住む柵を逃れし羊のように #23…

#2331-2335  脚馴らしの・・・

福知山市三和町菟原下二 鹿倉山成満寺(浄土真宗) <義母の短歌>#2331-2335 #2331 脚馴らしのつもりが夢中で鍬ふるい膝関節の機嫌そこねる #2332 電気治療受ける窓より今日も追う一羽の鳶の空載る行方 #2333 祖の想いこもれる畑を守りきれず原野に還さん土…

#2326-2330 夕ぐれの・・・

福知山市三和町菟原下一 梅田神社 <義母の短歌>#2326-2330 #2326 夕ぐれの静けさ夜空の美しさ年毎親しみ増しゆく自然 #2327 湖底めくその静けさこそ得難しとう師の励ましの文字に救わる #2328 木には木の旬あり霜置く梅ヶ枝に昨日より今日膨らむ莟 #2329 …

#2321-2325 侘しさも・・・

福知山市三和町菟原下一 梅田神社 <義母の短歌>#2321-2325 #2321 侘しさも共に茹で上げ煮つめたる蕗の薹です食べてみますか #2322 瞼なき魚の眠りをみてみたし閑居の昼の想い膨らむ #2323 母と呼ばれ半世紀余をわが経たり育つ子に従きともに育ちて #2324 …

#2316-2320 ぽつねんと・・・

福知山市三和町菟原下一 観唱山福林寺 <義母の短歌>#2316-2320 #2316 ぽつねんと残るひとりの客下ろし空の終バス奥山に消ゆ #2317 待つことも待たるる焦りもなきひとり自由と孤独の押しくらまんじゅう #2318 噛み合わぬ会話に黙しすかんぽのすいすい酸っぱ…

#2311-2315 行商の・・・

福知山市三和町下一 観唱山福林寺(天台宗) <義母の短歌>#2311-2315 #2311 行商の媼と何やら気の合いて零余子と魚の物々交換 #2312 用心に持ち来し杖をまた忘れ「お客さーん」と追いかけられる #2313 バス停もポスト自販機いまだなきこの素朴さに足りて棲み…

#2306-2310 耳聡き・・・

福知山市三和町梅原 祇園神社 <義母の短歌>#2306-2310 #2306 耳聡きひとりの昼の静けさや検針の人声もなく去る #2307 生なまの正義派なりしがだんまりを保身のひとつに加えて老境 #2308 なんでこう秋は心の急くものか明日なきさまに散る柿落葉 #2309 まな…

#2301-2305 羊歯ゆらし・・・

福知山市三和町梅原 祇園神社 <義母の短歌>#2301-2305 #2301 羊歯ゆらし麻黄の葉ゆらし竹ゆらす風の連れ来し肱笠の雨 #2302 子の来ると報せにそぞろ指はずみ炊く零余子飯南瓜の甘煮 #2303 天を指す祈りの象の杉が好き拘りすててすんなり生きん #2304 あや…

#2296-2300 水底の・・・

福知山市三和町梅原 祇園神社 <義母の短歌>#2296-2300 #2296 水底の小石がゆく水見るように聴いているなり若者の声 #2297 侘しさとひとりの自由を天秤にかければ孤独の重い盆明け #2298 秋冷えに鴉も啼かぬ静けさを宥めるごとき炊飯器の湯気 #2299 杖捨て…

#2291-2295 平和とは・・・

福知山市三和町加用 勝田神社 <義母の短歌>#2291-2295 #2291 平和とはこんな象かこんもりと合歓の花咲く桃色の蔭 #2292 茗荷の子探す繁みににっと笑む不登校児のような紅茸 #2293 夕立をざんざん浴びて甦るもう後のない紫陽花の毬 #2294 衰えて忘られゆく…

#2286-2290 照る日あり・・・

福知山市三和町加用 勝田神社 <義母の短歌>#2286-2290 #2286 照る日あり曇る日もあるわが声を脳の吐息の色と思えり #2287 上品にひとつ咲くよりわっと咲く中輪のばらわれに親しき #2288 野の猫と対き合い長く屈みいる初老の男の背なの寂寥 #2289 しなやか…

#2281-2285 吹く風に・・・

福知山市三和町加用 勝田神社 <義母の短歌>#2281-2285 #2281 吹く風に揺れつたわみつ麦撫子なよなよ伸びて自が春守る #2282 覚めて先ず見る空模様毎日がお日様まかせの私の暮らし #2283 二とせ余異国にありし孫帰りまずすき焼きが食べたしと言う #2284 嘘…

#2276-2280 辛うじて・・・

福知山市三和町台頭 鴈掛神社 <義母の短歌>#2276-2280 #2276 辛うじて纏う心の綺羅さえや脱がせてしんと高き残月 #2277 春をなお暗く乾きて枝に垂るはじけなかった石榴の木乃伊 #2278 残りものあっさり捨てて洗う皿何もなかりしごとく光れり #2279 どっぷ…

#2271-2275 道楽で・・・

福知山市三和町台頭 鴈掛神社 <義母の短歌>#2271-2275 #2271 道楽で歌は詠めぬと身震いぬ三ヶ島葭子の歌人魂 #2272 走り去る轍にとび散るにはたずみの水がじりじりもとに戻り来 #2273 夕茜背に負う猫の耳透けりそんな切ない目をしてくれるな #2274 姥捨の…

#2266-2270 断水の・・・

福知山市三和町台頭 大塔山蓮華寺自性院 高野山真言宗 <義母の短歌>#2266-2270 #2266 断水の解けし蛇口を迸しる恐れるごとき錆色の水 #2267 くすぶれる冬の襤襛の後影春がわわわと土割る気配 #2268 冬将軍また舞い戻り雪降らすほんとは淋しい鬼かも知れぬ …

#2261-2265 喉元に・・・

福知山市三和町台頭 大塔山蓮華寺自性院(真言宗) <義母の短歌>#2261-2265 #2261 喉元に言葉とならぬ言葉溜めみどり児総身でくうくう笑う #2262 大波小波打ち合うごとき正月の騒音絶えて聞く雨の音 #2263 七草にあらぬ湯豆腐煮えたたせひとりに戻りし静け…

#2256-2260 うす雲に・・・

福知山市三和町大原 大原神社 <義母の短歌> #2256 うす雲に遮られつつ半月のもの言いたげに光をこぼす #2257 枯芝に粉雪積る白き音空耳ばかりにあらぬ静けさ #2258 身に叶うひとつあれかし鍛えたる心骨抱きて超えし世紀に #2259 粛々と越えし世紀に段差な…

#2251-2255 冬の雨・・・

福知山市三和町大原 大原神社 <義母の短歌>#2251-2255 #2251 冬の雨耳傾げれば何時かまた天へ帰ると呟きつつ降る #2252 欲得のうすれて寒き胸に抱く十三回忌の夫の塔婆 #2253 わが植えし山茱萸の実の五つ六つ持ちしことなきルビーにまさる #2254 名にし負…

#2246-2250 霜月の・・・

福知山市三和町大原 大原神社 <義母の短歌>#2246-2250 #2246 霜月の大江の山に遭う蝶よ汝れはも浮世避けるひとりか #2247 新世紀何が変るか替えなけりゃ接骨院へせっせと通う #2248 何程の食得たりしや夕陽浴び背な丸めいる野良猫親仔 #2249 大江山晴れゆ…

#2241-2245 梅もどき・・・

福知山市三和町大原慈眠山法釈寺(曹洞宗) <義母の短歌>#2241-2245 #2241 梅もどき小さき乍ら陽をかえし真赤な秋をパチパチ謳う #2242 対向車避けんときりしハンドルにすでに骸の獣を又轢く #2243 求め来しカサブランカの球根を姫を寝かせるごとく埋める …

#2236-2240 丹念に・・・

福知山市三和町上川合 稲葉神社 <義母の短歌>#2236-2240 #2236 丹念に笹の根を掘り千草抜くその時それは私のすべて #2237 かたくなに独りを通す田舎家に姥捨て山の秋の風たつ #2238 礼服をまとえるごとく乱れざる蝉のむくろを裏がえしてみる #2239 天粕を…

#2231-2235 芥子坊主・・・

福知山市三和町上川合 稲葉神社 <義母の短歌>#2231-2235 #2231 芥子坊主河童の頭に似たる実がぷるんと揺れて種こぼしけり #2232 ゆく雲に溜息ひとつあずけ置き羽の破れし蝶を見守る #2233 抱き上げる手にひしひしと血の温みひ孫に聞かせるわが子守唄 #2234…

#2226-2230 丹精の・・・

福知山市三和町上川合 稲葉神社 <義母の短歌>#2226-2230 #2226 丹精の花の開くは巣立つ子を送るに似たり咲くまでが華 #2227 わが疎むどくだみ鉢に愛ずる子とわれの生きとの小さなひずみ #2228 何をしていてもゆらゆら揺れやまぬ厄介者を心と呼べり #2229 …