義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

#1421-1425 亡夫の友・・・

関西花の寺25ケ所 第20番 石光寺 <義母の短歌> #1421 亡夫の友逝きしと聞けり今頃は病解かれて手を取りあうらん #1422 空晴れて流れ豊かに相うてり彼岸花朽ちてはぜるもみじもゆ #1423 ぎりぎりと捩れつほどけつ刻のゆく変体がなのような一日 #1424 錐…

#1416-1420 真綿に棘・・・

関西花の寺25ケ所 第20番石光寺 <義母の短歌> #1416 真綿に棘包めるような言葉吐くいずくの地にもひとりやふたり #1417 飲みさしのわがコーヒーをためらわずのむ若者の産声も知る #1418 盗まれる若さ持たねど鍵かけて振りかえりみるひと日の流れ #1419…

#1411-1415 ぐおっぐおっ・・・

関西花の寺25ケ所 第20番石光寺 <義母の短歌> #1411 ぐおっぐおっ鳥か獣か午前二時真闇縫いゆく声の重たさ #1412 葉隠れの四季咲きつつじ忍耐のおみな思わせ小出しに咲き継ぐ #1413 泥滲みし一円玉にも裏表拾はむとするたまゆらの迷い #1414 嫌わるる…

#1406-1410 きわまりて・・・

関西花の寺25ケ所 第20番 石光寺 ご朱印 <義母の短歌> #1406 きわまりて崩れんとする大輪のダリヤの終焉鋏に葬る #1407 自が寝息何かひそむと思うまで静寂は深し秋の夜長し #1408 秋桜ゆく先ざきの野にゆれて世は平和なり騒ぐな政治家 #1409 物言わぬ…

#1401-1405 彼岸への・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 長岳寺 <義母の短歌> #1401 彼岸への往復切符があるならば心の飢餓が謀叛を叫ぶ #1402 目を閉じてあしたの予定立ててみる勢いて醒める何かあらぬか #1403 季に遅れ莟の固き野牡丹が秋の日差しを懸命に吸う #1404 あけびの実千…

#1396-1400 放って置け・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 長岳寺 <義母の短歌> #1396 放って置け花は勝手に咲くなどとたやすく言うな花が聞いている #1397 忙しげな振りして栗剥き菜を洗う迷いの十月温みが欲しい #1398 幟竿の先棒担ぎし肩に滲む痛みは身の程知れとう訓示か #1399 満…

#1391-1395 立て板に・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 長岳寺 <義母の短歌> #1391 立て板に水流すごとき販売員のそれも生業聞くだけはきく #1392 梅ジュースに「いいちこ」割りて魂の浮遊なす間に眠れねむらな #1393 旬の味しその実ほんわか噛みしめつ何時が旬やら我が生き来しの #1…

#1386-1390 知らぬ土地・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 長岳寺 <義母の短歌> #1386 知らぬ土地堂々めぐりの迷い道方向音痴ののど渇き切る #1387 地名告げ姓告げぬ人花のみの縁に花苗届けくれたり #1388 山ぶどう大方小鳥に啄ませお余り数粒味わいみたり #1389 誰も来る筈なき背戸に…

#1381-1385 旧姓に・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 長岳寺 <義母の短歌> #1381 旧姓に戻らずかにかくに生き来しぬ戻る道などある筈のなし #1382 悪いことばかりでもなし雑草の強さ身につくひとりに馴れて #1383 梅もどきに群がる目白よ余すなく啄むがよい冬は長いぞ #1384 秋冷…

#1376-1380 施錠なし・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 <義母の短歌> #1376 施錠なし秋の夜長を声立ててテレビに笑いやがてむっつり #1377 一周忌のあかとき夢に歌の師の一期一会の温顔に遭いき #1378 稀有に澄む夜空粛しゅく名月の貴夫人に似て親しみ持てず #1379 腰痛の友を医院…

#1371-1375 客が来る・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 長岳寺 <義母の短歌> #1371 客が来るかたづけねばと焦るのみ刻の流れのやたらに速し #1372 師はすでに過去の人なり一周忌の遺影に告ぐる永遠の別れ #1373 そのように気だるき声に啼くでない鴉よわれも切なくなるに #1374 幼な…

#1366-1370 赤とんぼ・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 長岳寺 <義母の短歌> #1366 赤とんぼ群れ翔ぶさまを山住みの目に珍らしむ何かが狂える #1367 虫の音を愉しむでもなし何待つにもあらぬ湯上がりしばし佇む #1368 秋彼岸ひとり詣でるわが影に明るくあれとは仏も言うまじ #1369 …

#1361-1365 その毛虫・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 長岳寺 <義母の短歌> #1361 その毛虫蝶になるから殺すなと東北生れの町住みの婿 #1362 命終の兆しあらわにたゆたえるくらげの終も滑らかならず #1363 里住みの越冬に似て大方はトンネルなりき宮福線の旅 #1364 天つ陽の差すこ…

#1356-1360  平穏に・・・

関西花の寺25ケ所 第19番 長岳寺 ご朱印 <義母の短歌> #1356 平穏にあると思うな此れの世の雨も嵐も予告なく来る #1357 気がつけば引き来し葱の手にあらず迷いを持てば何かを失う #1358 語り合う家族失うひとり住み増えゆく里のひとりよわれも #1359 …

#1351-1355 此の時計・・・

関西花の寺25ケ所 第18番 百毫寺 <義母の短歌> #1351 此の時計止まりいるかと思うまでひとりに長し音なき日暮れ #1352 黄金虫を曳きゆく蟻の生き力すざましきまでひたぶるなりき #1353 水入らずのくらしなかりし吾が来し方子の家の団欒ときに羨しき #1…

#1346-1350 雲間洩る・・・

関西花の寺25ケ所 第18番 百毫寺 <義母の短歌> #1346 雲間洩る秋の光りに温みあり静と動なら動に傾く #1347 クリーン作戦不参加の身のせめてもと人に知られず広場の草引く #1348 身の程を知らず驕りし紅萩の倒伏に敢えて支えを結わず #1349 秋海棠藤棚…

#1341-1345 耐えられぬ・・・

関西花の寺25ケ所 第18番 百毫寺 <義母の短歌> #1341 耐えられぬ程の暑さも覚えなく短かりしよ還らざる夏 #1342 連休の息子ひとりを帰らせし嫁も姑になる日近づく #1343 平穏もときには厳しき世と思ううながす人なき飲食の卓 #1344 山住みに見馴れし緑…

#1336-1340 繁殖の・・・

関西花の寺25ケ所 第18番 百毫寺 <義母の短歌> #1336 繁殖の為に血を吸う雌蚊とぞ虫とておんなはたくましくあり #1337 つきつめて物思うまじ秋日和明日は良きことあるやも知れぬ #1338 いま少しましな眼鏡を掛けよとは言うて呉れるな好きでかけている …

#1331-1335 真向かわねば・・・

関西花の寺25ケ所 第18番 百毫寺 <義母の短歌> #1331 真向かわねばひと枝落とすも至難なりまして瞬く歌詠むなどは #1332 虫の音を友とし静に生くるにはいささか心熱温み残れる #1333 土に置く手の甲渡る細みみず みみずは体感持たぬものらし #1334 わ…

#1326-1330 身じろがず・・・

関西花の寺25ケ所 第18番 百毫寺 <義母の短歌> #1326 身じろがず雨の陽明りうすれゆく窓を見ていつ今思惟はなく #1327 覚め切らぬ耳にかそけき雨音の心濡らすや故なき溜め息 #1328 クレーン車巨体ギコギコ軋ませて清しき礼添え道あけ呉るる #1329 見は…

#1321-1325 長命と・・・

関西花の寺25ケ所 第18番 百毫寺 <義母の短歌> #1321 長命と人の言うまで生きんかなさてその生きの在り方が問題 #1322 わが炊きし栗飯美味しと食む友の貌が見たさに栗の渋とる #1323 白萩のしだり枝そよろ揺れ遊ぶ床しき庭持つ超モダン人 #1324 咲きき…

#1316-1320  巣を守る・・・

関西花の寺25ケ所 第18番 百毫寺 <義母の短歌> #1316 巣を守る蜂は人刺し死ぬと言う古武士に似たるその潔さ #1317 巣立つべく笹群ゆらし雉の子の命こもらせ羽ばたける見ゆ #1318 期限切れ気にせぬわれの残飯を夜ごと漁れる生きものもいる #1319 向日葵…

#1311-1315 生きてわが・・・

関西花の寺25ケ所 第18番 百毫寺 <義母の短歌> #1311 生きてわが遂げたきことの二つ三つ成るや成らずや言葉とはせじ #1312 出がらしの番茶ひと味物足らぬ新しき風入れんか歌に #1313 蟻塚を鍬に潰せし償いに引き草積み上げ此れで足りるか #1314 庭の茂…

#1306-1310 秋の庭・・・

関西花の寺25ケ所 第18番白毫寺 ご朱印 <義母の短歌> #1306 秋の庭紫つつじほつほつと狂える春の華には遠し #1307 むらおさに寸志差し出しそれをもて責任逃れと言うにはあらず #1308 遠き日は茶飯事でした被せ継ぎ真面目な貌して上手いもんです #1309 …

#1301-1305 推敲に・・・

関西花の寺25ケ所 第17番 般若寺 <義母の短歌> #1301 推敲に推敲重ね毀れたる玩具離さぬ子供の様に #1302 ぼうと見てあれば不逞なドラマの男花瓶で叩かれ易やすと死す #1303 つばらかに自が生態を見届けん死語のことまでわが構えねど #1304 腹立てば「…

#1296-1300 沈みたる・・・

関西花の寺25ケ所 第17番 般若寺 <義母の短歌> #1296 沈みたる芥世に出る術のなし布袋葵は浮かびてひらく #1297 実りの秋華麗に過ぎゆく長月のひそかに曳きずる冬を怖るる #1298 踏切に空席運ぶ列車見つ思えばわれも乗らず久しき #1299 秋風に耐えにし…

#1291-1295 集会所の・・・

関西花の寺25ケ所 第17番 般若寺 <義母の短歌> #1291 集会所の物置ひんやりビール瓶酒の空瓶雑然とあり #1292 ありてなき命虚しき水中花人に忘られなお色褪せず #1293 彼岸花咲くと覚ゆる岸を刈るほつほつ咲く頃逝きし人はも #1294 拾い来し栗の実今日…

#1286-1290 異界への・・・

関西花の寺25ケ所 第17番 般若寺 <義母の短歌> #1286 異界へのポストが欲しいかたくなに言葉とせざりし愛告ぐるべく #1287 老いと言う文字がどうにも気に入らぬ銀髪のような言葉生れぬか #1288 かなしみは日陰のどくだみ削るとき忍び寄るなり暗く冷た…

#1281-1285 舗装路を・・・

関西花の寺25ケ所 第17番 般若寺 <義母の短歌> #1281 舗装路を割りてすっくと黒竹の何処にひそめるその生き力 #1282 子がひと夜纏いしパジャマ身につけて虚脱の洞の埋めようもなし #1283 瓶に挿すひと日花なる酔芙蓉酔深まれる花びら危うし #1284 新型…

#1276-1280 つと立てば・・・

関西花の寺25ケ所 第17番 般若寺 ご朱印 <義母の短歌> #1276 つと立てば予約の歌誌のさっと出る書房スバルの馴染みとなりぬ #1277 雨脚はいよいよ激し夜は深し待ちたる雨も続けば怖し #1278 一羽鳴き数羽応える鴉どち一夫多妻か親子か知らず #1279 窓…