義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

#411-420 すすき刈る・・・

関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#411-420 すすき刈る指はすすきに切られおり青くさき指唇にあてる 子の帰る報せにともる奥処の灯大根洗い白菜を引き オレンジのシャツが似合える老い男は脚病む老女抱きてゆけり 七十年足踏みしめて登りきし…

#401-410 背戸のあく・・・

関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#401-410 背戸のあく気配に立てば生きるため栓なき盗みの猫がにげゆく 回覧板届ける家に立ちこめる主待ちいる夕餉の匂い 寒空にとがあるごとく朝顔は池の囲いに終われずに咲く 裸木は飄々と佇ち口重きものの…

#391-400 真夜の・・・

関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#391-400 真夜の戸を叩く少年道をききシンナー匂う友曳きずりて 真夜を醒め方位も失いさまよえる若者の脚どっと倒れ入る 送りやる少年の名を知らぬまま走らす車に親の面輪顕つ アクセルを踏みつつ鼓動昴まり…

#381-390 雑草に・・・

関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#381-390 雑草に混じる野ぼたん際立ちて人はばからず花散らしゆく いささかの心残して去る庭の石蕗つましく見送りくれる 柿の実の赤く熟れても人居らず夕昏れの雲の流れは早し 枯れ枝の岸をすべりて音立てる…

#371-380 自己意識・・・

関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#371-380 自己意識告げるか枝に鴉啼き人その声を読むときもあり 繁殖のはげしき故に黄金笹火鉢の中にひしめきて生う いずこさす確かな当ても持たず出て友が家に見る夕茜空 豪邸もひとりの軒もへだてなく染め…

#361-370 蜘蛛糸に・・・

関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#361-370 蜘蛛糸にかかる枯葉のクルクルと廻るを病床の窓に見ていつ谷川の細る岩間をひとすじの白布垂れるを描く人あり裸木の枝軽がると天仰ぐ縫いし錦地にかえして過ぎ来しのこもごも秘める掌に浮かびくる…

#351-360 とどめたき・・・

関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#351-360 とどめたき野の草落ち葉の彩よせて色紙に残すひと掬いの秋 七十路にかかるに無邪気と言われいて隠すを知らぬ単細胞なり スーパーのテレビに写る女あり汝れと知るまで数秒を佇つ ひた走る車に入るく…

#341-350 庭に散る・・・

関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 <義母の短歌>#341-350 庭に散る落ち葉カラカラ吹き溜まり窓にも季の移ろいてゆく 万歩計結わえて今日は二百歩を切るかもしれぬひと日の終わり 日帰りのうから等ひと日賑わして水引くごとく夕べに去れり 朝まだき霧海原の…

#331-340 花と人の・・・

関西花の寺25ケ所 第3番 金剛院 御朱印 <今日からのトップ写真> 今日からトップ写真を「関西花の寺25 第3番金剛院」とします。 ホームページはこちら。(左のこちらを右クリックして新しいウインドウで開いてください) <義母の短歌>#331-340 花と…

#321-330 手造りの・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 手造りのベンチ形見と置くを出し子が掛けているつぶれはせぬか 逝きし面美しくあれと子の掌にて夫の頬髭剃らしめたりし 死の床のうつつに「飯」にせよと言う末期となりし一匙の粥 花びらに露まろばせてふく郁と手折りし菊…

#311-320 思うまま・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#311-320 思うまま花咲かせゆく雨の日の絵の具と筆をこよなき友に 音もせで終のひと葉を散らすとき紅葉はすでに新芽を抱く 緑濃き葉陰に産声あげるごと椿の紅い開きそめたり 頁繰る指しなやかにそらせいる若…

#301-310 湯豆腐に・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#301-310 湯豆腐に小さきパックの半分を煮たてる湯気にひとりの夕餉 まなうらに煙り吐く汽車浮かべつつ軽がる走るディーゼルをみる 目のさきに迫りくる冬沈黙の秘み事抱く魔女の如くに 初雪はふうわり落ち…

#291-300 夫病みて・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#291-300 夫病みて捨てし親猫子猫とも逝きしと聴きぬ病室にいて 吾が触れる紙と鉛筆冷蔵庫他に音なき静けさにいる 風船の空気の漏れる如くいてひとりの夜を平びておりぬ 菊折れば白き花びらほろほろと泪の如…

#281-290 農捨てて・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#281-290 農捨てて今更にかなし夢路にも背に汗して草けづりいる いたずらに夜を点せる灯り消し自らの姿闇に見つめる 雨除けて蛙飛びこむ軒下に暫しならびて降る雨を見る 渡り鳥振りかえらずに去ると言う捨て…

#271-280 心せく・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#271-280 心せく何に残さん此の彩を紅葉は日毎褪せゆくものを いとけなき山茶花の花咲き初めて花びら早も地を彩る 朝風にマフラーなびかせ過ぎし女若さみなぎる風まき散らし 緑葉に産みつけらりし金色の卵つ…

#261-270 心地よき・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 心地よき眠りを欲りて飲む酒は浮かれもせなく麻痺呼ぶ五体 絶望と言うにあらねどだらだらと醒めてかじれるパンは乾きて 昼暗き峡の山岸明るめりハゼ燃え立ちて限りなき彩 雨の夜落ち葉を叩く紋様のワイングラスのかすかに…

#251-260 旅をせんか・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#251-260 旅をせんか宴げ開くか女等は言葉に酔いて会過ぎてゆく 残照に緑彩られたる黄金雲奥処にかがやく菩薩おわすや 水底の砂利に重なる紅葉の影を揺らして尾びれきらめく 欲しらぬ幼きもののいとしかり澄…

#241-250 羽根たたみ・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌>#241-250 羽根たたみ動かぬ王者雀蜂艶持つ胴にふくらみ保つ ぬばたまの闇に馴れゆく眼と言わん残り世の路細ぼそと見ゆ 酒座に居て野にある如く黙りいる妻逝かしめし男のひとり 撫子の稚苗を掬う素手の指し…

#231-240 掌に・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 掌に払う秋の蚊の羽根虹の色の透きてふるえて動かずなりぬ 一薙の鎌下に散らう彼岸花紅のうす絹ひるがえるごと 子育てに面やつれするうつし絵の実母見て我は良き世に生まれる あれこれと服を選びて無駄な刻過ごす奢りを店…

#221-230 ひと夏の・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 ひと夏の我が血をなせしオクラの実冷気に縮む花小さくて 物売りが電話で齢を確かめて先は語らずガチャリと切れり 瀬戸大橋夫と渡らむ夢失せて醒めても居てもどうにでもよし 逝きし姑何ぞ嬉しき日のありやなし浮かぶ面輪の…

#211-220 咲き誇り・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌> 咲き誇り触れなば散らん情濃ゆき人思わせる芍薬の花 フロントに鎌上ぐひとつかまきりの生き確かめてアクセルを踏む ざわめきの酒座を逃れて施錠するひと日の終わりこそと音する すきとおる新米友は賜いきぬ…

#201-210 目に見ゆる・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 <義母の短歌> 目に見ゆるもの皆柔し春草の吾に従う如く過去断つ 詣でとは従いゆくのみ坂下の出店に心馳せし幼日 足許に落ちていた一銭嬉しかり使う使はぬに心ふるえし 風除ける厳にも似て祖父の愛貧しき幼を支えくれしが…

#191-200 秋茄子の・・・

関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺 御朱印 <ページトップの写真> 今日から、関西花の寺25ケ所 第2番 楞厳寺(りょうごんじ)の写真にします。 <義母の短歌 #191-200> 秋茄子の艶持つ紺に雪の日の毛糸をおもう肌寒き朝 独り居に特権もある陽の入りを羽…

#181-190 根を下ろす・・・

関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 根を下ろす土は選ばず彼岸花秋を走りて夕な夕な褪せゆく 祭り太鼓の音のそぞろに波立てばこもる女も誘われてでる 女の夢詰めて小袖の眠りいる和箪笥ずしりと幅占めており うたた寝より醒めて暫しを見廻…

#171-180 沢蟹に・・・

関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 沢蟹にふれなば鋏振り立てて己を守る本能持てり 今ここに肩押す人のありとせば地獄の果てまで落ちなん危うさ 我が耳に寝息届くる墓参の息彼岸の夜に疲れて眠る 夜風受けコトコトと鳴る窓ガラス夏には聞…

#161-170 幼日の・・・

関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 幼日のお手玉かとも酔芙蓉つましくまろぶ花殻あまた 仙人草白き十字の花群れてまばゆきばかり鎌当てられず 撒水の虹に小人を遊ばして幼に語る童話一こま 一夏の我が血をなせしオクラの実冷気に縮む花小…

#151-160 庭の実を・・・

関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 庭の実を喰みし返しか播かぬ種の数多芽吹けり鳥宿る木下 蝉の終知る思いする裏山に声を限りに啼きつくす聴けば うしろみる憂いも持たず妻の座に安らぎおりしか四十五年 その終を知るや知らずや黒揚羽優…

#141-150 花蘂の・・・

関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 花蘂の中に没りゆき蜜を吸う蜂も見えざり何時しかに秋 東路に名医のありて来よという老いには遠き千葉に住む娘よ 刃先立て栗の双子を頒つ瞬ドクとベトとの分離思いぬ 仮面など持たずと思えど施錠して人…

#131-140 稜線を・・・

関西花の寺25ケ所 第1番 観音寺(公式HPはこちら) 稜線を抜き去る一樹もやこめて被く貴人の去り行く後姿 安らかに眠れと弔辞結ばれて別離の扉音なく閉まる 誰の待つ夕餉にあらねば没り陽の中を遠出の虚しき安堵 潰れざる程に押さへる青虫もなかなか死な…