#151-160 庭の実を・・・
庭の実を喰みし返しか播かぬ種の数多芽吹けり鳥宿る木下
蝉の終知る思いする裏山に声を限りに啼きつくす聴けば
うしろみる憂いも持たず妻の座に安らぎおりしか四十五年
その終を知るや知らずや黒揚羽優雅に舞えり秋の黄昏れ
ふり向けば鍬ふるう頬明かるかり癒えたる友の命輝く
シャリシャリと間引き葉喰めば歯に舌に生きる証しの青き味する
一匹の蚊に乱される神経のはりはりと細きなど人待てり
カリカリと鼠しっこく歯音立てて脳神経の髄掻きまわす
もの言わず独りある夜に越前岬の暗き岩打つ飛沫を思う
雀追う案山子は見えず稲刈り跡わだち残れり足跡なくて