義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:動植物(一)

関西花の寺25ケ所 第9番 鶴林寺

 

手作り短歌集に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

まず(一)巻に掲載された432首の内、一番多く(88首)が含まれるカテゴリー【動植物】に分類した短歌から順に掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:動植物(一巻掲載88首)>

#3    国道に小さき命果つるありハンドル切りて回り道する


#5    くる日くる日を花の畑に蝶といて跳ぶこともなく草に膝つく


#11    かぞえゆく牡丹の蕾一つ二つ中に目覚めの雨蛙なり


#12    れんぎょうの匂える家の壁を這う蔦かずら褪せて今は主なし


#22    爆撃を受けるがに逃げ散らう蟻を見ている我が鍬の下に


#23    ふる里の北国遠き我が庭に鈴蘭あまた蕾つけたり


#37    花菖蒲あすは開かむ直立の蕾一途に天を仰げり


#40    施錠する雨の玻り戸に白き蛾の羽根打ちふるい灯にしたいよる


#41    綿雲に吸われる鳶の何処へゆく午後薄曇る待合室の窓


#45    触れし掌に破れ羽残して黒揚羽暗き緑に影吸われゆく


#57    採り込みし杏を知らずひよの来てつつくものなき枝葉をゆらす


#59    とりとまを斜めに活けて一夜過ぐ意志持つ如く花首立てり


#65    我が膝を尺取り虫の折れてゆくゆきつく先は汝も知るまじ


#67    疲れ曳き歩む野の道ひとつ蝶動かずにおり脚根平びて


#72    逝く時は六文銭で事足りる羽ばたきみるか残んの力で


#84    花むらのゆれて蛙の終わりの声秋陽に蛇尾のきらめきて消ゆ


#85    掌に乗る程の蛇横切れり幼きものの命いとしく


#90    純白の命はかなし酔芙蓉恋に酔えるか紅にねむる


#92    叩きたる蚊のむくろ見る掌に羽根も手足も数足りてあり


#96    当てもなく車駆る時孤を描く鳶も一羽なりいずこを目指すや


#98    孤を描く鳶急降下またたきの刹那に何を攫いゆきしか


#102    飼われいて時折り家出する猫の何を恋うるか野生のように


#104    夾竹桃己れ育む陽を求め繁り逃れて丈高き花


#105    枯紫陽花もやす束の間声のなき悲鳴にも似て炎は上がる


#106    窓明かり及べる庭に夏百合の地這う闇にほの白くゆれ


#108    畳這う馬追い掃除機に吸い込めり生き確かめる夜の気紛れ


#110    メダカ等の流れにさからい泳ぐ様進むと見えて流されもせず


#111    墓地に咲く紫桔梗咲きつきて空の青さに旅立ちゆきしか


#113    他所ものと構えて見つめる三毛猫の光る眸と居る人待つ刻を


#114    ラジオの楽流れる牛舎に腹這えるピンクの乳房溢れんばかり


#116    張りつきてはり戸に写る雨蛙今宵の糧を待つ指の数


#121    飛べぬまで腹太らせて充ち足りる蚊の終を打つ我が掌の動き


#123    高圧線楽譜にも似て空にあり小鳥の音符気紛れに飛ぶ


#126    見つめいる外灯の闇に浮かぶもの蜘蛛ひとすじの銀糸光らす


#127    汗拭う木陰に蜻蛉流れ飛び秋を愉しむ直ぐなる姿勢


#134    潰れざる程に押さへる青虫もなかなか死なぬ命持ちおり


#135    月の庭すすきそよがずたたずめり掌熱く襟掻きあわす


#136    去年此処にまむしひそみしうかがえば木株は朽ちて土に還れり


#140    悲しみの色持つなどと人言えり花は一世を咲き充ちて散る


#143    刃先立て栗の双子を頒つ瞬ドクとベトとの分離思いぬ


#148    石垣に抜け殻かぜ吹かれおり脱ぎたる後を何処に潜む


#149    いが踏めば意志持つ如く飛び出せり栗最高に美しき一瞬


#150    純白に紅羞いゆき酔芙蓉摂理のままに花弁閉じゆく


#151    庭の実を喰みし返しか播かぬ種の数多芽吹けり鳥宿る木下


#152    蝉の終知る思いする裏山に声を限りに啼きつくす聴けば


#154    その終を知るや知らずや黒揚羽優雅に舞えり秋の黄昏れ


#161    幼日のお手玉かとも酔芙蓉つましくまろぶ花殻あまた


#162    仙人草白き十字の花群れてまばゆきばかり鎌当てられず


#164    一夏の我が血をなせしオクラの実冷気に縮む花小さくて


#165    味覚より香りのよきと早生みかんのうすき皮むく目を細めつつ


#168    飛ぶわたの何処に芽吹く当てもなく意思なきままに視界に沈む


#169    執念の幽鬼の如く散らぬまま黒く朽ちゆく彼岸花哀れ


#171    沢蟹にふれなば鋏振り立てて己を守る本能持てり


#175    栗拾うひま喜びもなかりしを柴栗の渋取りつつ思う


#177    はりと網戸の狭間に生きる蛾に思ういにしえ女の耐ゆるにも似て


#181    根を下ろす土は選ばず彼岸花秋を走りて夕な夕な褪せゆく


#188    その終を告げているかも中枝よりにぶき音立て柿地に落ちる


#189    垂れ下がる蔓のなかばにまろまろと枝にあけびの我を見下ろす


#211    咲き誇り触れなば散らん情濃ゆき人思わせる芍薬の花


#212    フロントに鎌上ぐひとつかまきりの生き確かめてアクセルを踏む


#219    金木犀散りしく片辺を掃き残す金の彩酔い醒めるまで


#221    ひと夏の我が血をなせしオクラの実冷気に縮む花小さくて


#231    掌に払う秋の蚊の羽根虹の色の透きてふるえて動かずなりぬ


#232    一薙の鎌下に散らう彼岸花紅のうす絹ひるがえるごと


#237    ひとり旅首振る鳩のまろき眸を暫しの友に列車待つ刻


#238    犬嫌い通じぬものか訪う度に甘える犬を遂に撫ずれり


#241    羽根たたみ動かぬ王者雀蜂艶持つ胴にふくらみ保つ


#244    撫子の稚苗を掬う素手の指しとねの土を慣らし慣らして


#245    みどり児を寝かす手付きに植えてゆく指にまぎれるニゲラの稚苗


#260    藪椿ひともと剥がれ川べりのせせらぎに水漬け蕾つけいる


#268    霜畑の花魁草は寒ざむと装いており夕べを匂う


#272    いとけなき山茶花の花咲き初めて花びら早も地を彩る


#274    緑葉に産みつけらりし金色の卵つぶさに潰しゆく爪


#276    人間の歩むとすれば何里ともひたすらに這う蟻の根性


#283    雨除けて蛙飛びこむ軒下に暫しならびて降る雨を見る


#294    菊折れば白き花びらほろほろと泪の如く掌にこぼれくる


#313    緑濃き葉陰に産声あげるごと椿の紅い開きそめたり


#350    もぎ残る葉陰の柚子の冷ゆるままあばたの皮のひそやかに実る


#360    逃げてゆく野良猫の胴太かりき此の寒空にみごもりいるらし


#371    自己意識告げるか枝に鴉啼き人その声を読むときもあり


#372    繁殖のはげしき故に黄金笹火鉢の中にひしめきて生う


#379    庭石の苔むしりいし庭師の掌ふと残し置く軒しのぶの緑


#380    庭石のかげに千両万両の鳥の胃満たす季までを赤く


#381    雑草に混じる野ぼたん際立ちて人はばからず花散らしゆく


#382    いささかの心残して去る庭の石蕗つましく見送りくれる


#398    石蕗の黄金に光る花茎の何を見むとて背伸びして咲く


#401    背戸のあく気配に立てば生きるため栓なき盗みの猫がにげゆく


#403    寒空にとがあるごとく朝顔は池の囲いに終われずに咲く

 

<管理人のつぶやき>

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