義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:暮らし・田舎(一)

関西花の寺25ケ所 第10番 摩耶山天上寺

手作り短歌集に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

義母の手作り短歌集(一)巻に掲載された432首の内、六番目に多く(35首)が含まれるカテゴリー【暮らし・田舎】(暮らし・田舎・農業など)に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:暮らし・田舎(一巻掲載35首)>

#4    後継者なく売りし田の代坪千余円今日受けしなりみ祖に詫びる


#8    積む雪にすべりまろびし校舎への坂急にして今も残れる


#16    遠ち近ちに耕運機の音とどろきて農なき我も心急がるる


#32    鉄塔から鉄塔へ張る線上を猿と紛らう工夫下れり


#46    圃場整備に田の面追われし蛍火の一つ二つが闇を縫いゆく


#56    夜気受けて路ゆくひとり案内する終わりの蛍吾れを伴う


#64    用のなき田植靴なり火に入れて積み上げしものは炎にきゆる


#69    ポンと鳴る音好ましく折る真竹抱えて藪の明るみてゆく


#76    緑より生まれて緑に消えてゆく模型見るがに峡のディーゼル


#82    真夏陽に修羅の面みせ野焼きする男等の汗黒く光れり


#97    夢を見る跳ぶ夢旅に駆ける夢皆夢の夢今日も草取る


#101    針持たぬ夜なかりけり縫い直し繕い物に余念なき頃


#112    蹲まる汗の背中に吹き溜りシャツ孕ませて過ぎる野風は


#119    暮れる中稲かける背を通り過ぐ装いおれば罪ある如く


#128    オクラ二個胡瓜一本茄子一つ我れひとりの為もぎて帰らむ


#129    山襞の起伏なめらに稜線伸ぶ菩薩裳裾の衣の広がり


#131    稜線を抜き去る一樹もやこめて被く貴人の去り行く後姿


#155    ふり向けば鍬ふるう頬明かるかり癒えたる友の命輝く


#156    シャリシャリと間引き葉喰めば歯に舌に生きる証しの青き味する


#182    祭り太鼓の音のそぞろに波立てばこもる女も誘われてでる


#186    唐辛子の濃ゆき緑葉まさぐりて指が目になり篭充たしゆく


#187    気紛れな時雨に濡れて戻り道篭の秋茄子露に艶増す


#200    圃場整備されて峡田の押し潰され慣らされて我が田も他人手に移る


#205    廃屋の壁這う蔦の千切れ千切れて風に吹かるる解体の日


#214    すきとおる新米友は賜いきぬ農に疲れて農なき我に


#266    陽のさせば何か求めて立ち上がる為さずとも済む草などむしり


#270    手を掛けぬ白菜ひとつ捲きおれば頭をさげて戴き帰る


#278    抜き立ての大根おろしさわやかに舌に生きてる辛さの味覚


#281    農捨てて今更にかなし夢路にも背に汗して草けづりいる


#310    軽トラで野良さす夫婦窓越しに掌を振りゆけり農ひとすじに


#318    すすき野の続く棚田に見えかくれ一軒家あり庇ひかれる


#348    三日見ぬ路方に燃える草もみじ踏みしく人の地下足袋跡をみる


#383    柿の実の赤く熟れても人居らず夕昏れの雲の流れは早し


#388    人影は灯に帰りゆき野に迫る闇に鴉の二声残す


#414    七十年足踏みしめて登りきし石塊れ坂も平らになりぬ

 

<管理人のつぶやき>

子供の日 外へ出ても 子供見ず