義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリ:動植物(四)

関西花の寺25ケ所 第21番 當麻寺西南院

 

手作り短歌集(四)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された238首の内、2番目に多く(53首)含まれるカテゴリー【動植物】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:動植物(四)>

#1024    紛糾なす会議のごとし集いくる鴉の声の今日姦しく


#1047    土乾けば先づ水仙の草とらんチュウリップの芽も笑い出したり


#1051    季のきてまんさくの花ひわひわと寄らねばそれと解らぬ程に


#1052    福寿草はたクロッカス野水仙春淡々と黄の彩にはじまる


#1060    散る日なき記憶の中の蓮の花やまとの国の名花と言わむ


#1068    木蓮の花の盛りに逝きたしと寒中空指すつぼみに思う


#1069    葉の揺れて一心不乱に啄める一樹の傍辺足しのばせる


#1071    一文字に擴げし翼飄々と弧を描く鳶に迷いのあらず


#1078    咲くにつけ散るにつけても諸花の一心込めて彩添えるなり


#1085    茣蓙敷きて見るものもなき里桜咲きしずもりて白ほむらなす


#1086    昨夜よりの雨に怠惰の身を起こし鉢にあしたの希望の種蒔く


#1087    われのみに聴こゆる程か音のして小鳥の走る椿の木陰


#1090    土佐みずき枯れしと思う下枝に花つけいたり点れるごとく


#1093    帰化タンポポ野面占むるを偏見のまなこに見下ろす島国根性


#1094    ささ濁る池面に写る花影をこわさぬ程にアメンボ走る


#1095    腐たれ木に虫は虫連れ寄り添える小さき平和わが乱したり


#1103    花桃の繚乱すぎし若葉縫い吐息のような風吹き抜ける


#1104    藤棚の倒れしままの花盛り山鳩の来て地に遊べる


#1105    むらさきの息ほのぼのと地に向きおだまき多くはのぞまぬかたち


#1106    蝶ふたつ明日無きさまに縺れ合い豌豆の花に紛れゆきたり


#1107    花びらの内側見せて崩れゆき紫木蓮滅びへ向かう


#1108    毒秘むる身とは知らずや金鳳花目にはやさしく黄に輝ける


#1112    ひなげしのもっこり殻を脱ぎすてて開くをみても疲れは癒えぬ


#1115    まだ若きどくだみ夏の香を放ち鴬日暮れを鳴きてやまざり


#1119    わが脛を樹木と紛うや蟻ひとつ登り下るを暫しは許す


#1136    鴉にも憂さのあるにかげんなりとひと声ふた声錆トタンの上


#1147    傘をさし人っ子ひとり居らぬ径ひとつ咲きたる向日葵見にゆく


#1149    咲き出づるどの花を庭の王とせんおのもおのもの一心の彩


#1152    聴き馴れし耳にも清し老鴬の啼く音愉しも街人といて


#1154    見慣れたる野猫いづくに眠るとや歩みおぼおぼ草むらに消ゆ


#1155    深窓の女子と言わんねむの花触れなば崩れむ細き花びら


#1165    残し置く小さき鶏頭四・五本のめぐりの草等命拾いする


#1167    脱ぎ捨てし破れ軍手を草の根は縦横無尽にてキルティングなす


#1168    選ばれて花咲かせるは幾粒か余りにちさし芥子の粒子の


#1175    さるすべり今を盛りの花蔭に昨日と同じ想いは抱かず


#1181    灼熱にダリヤの赤も褪せゆけり力及ばぬことばかりなる


#1183    花終る蓮の花托の変貌に女ひと世の移ろいをみる


#1184    蓮の葉に溜る小雨のこぼれては又こぼれては廻る水車か


#1191    池の面に映る緑に戯れて遊ぶ金魚のことさら赤し


#1195    さまざまの屈折ありて陽の目みぬ切り岸に咲くどくだみの花


#1200    黒揚羽バーベナ揺らして跳び立てり蝶には蝶の思惑ありなむ


#1220    花言葉「遅すぎる愛」とう梅もどき鈴成りの実にかそけかる悔


#1221    みずから滅ぶ日知るや根かぎり一期一会を啼きつくす蝉


#1222    夏の庭終わりを告ぐる花ばかり桔梗手折りて待つ返り咲き


#1225    山茶花も椿みず木も花桃もわが植えたればうからに等し


#1226    罠にかかりもがく猪人間をこよなく憎みているやも知れず


#1229    六左衛門村で求めしハンカチに描かれて散らぬ花菖蒲いくつ


#1236    宝石のひとつも持たず小判草咲かせて成らせし小判乾けり


#1250    車一台ようやく通れる舗装路も横切る毛虫に長き道中


#1251    抜殻は形見のごとく葉の裏に世に出て蝉のいのち幾日か


#1252    草引けば花も畑も起ち上るこの清しさに草引き飽かず


#1254    たたかれて平たくなりし蜂虻の象崩さぬ翅のひろごり


#1256    啼かぬ鳥小枝にひとつわれと聴くつくつくほーしとなきしきる声

 

<管理人のつぶやき>

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