#131-140 稜線を・・・
稜線を抜き去る一樹もやこめて被く貴人の去り行く後姿
安らかに眠れと弔辞結ばれて別離の扉音なく閉まる
誰の待つ夕餉にあらねば没り陽の中を遠出の虚しき安堵
潰れざる程に押さへる青虫もなかなか死なぬ命持ちおり
月の庭すすきそよがずたたずめり掌熱く襟掻きあわす
去年此処にまむしひそみしうかがえば木株は朽ちて土に還れり
夫婦茶碗汝も寡婦なり捨て難く余生の限り我がそばにあれ
玻り一重隔ての取れぬまま別れあこがれあれば早待つ再開を
水も我も器の型に収まれど折り折り飛沫あげたく想う
悲しみの色持つなどと人言えり花は一世を咲き充ちて散る