2022-05-02 カテゴリー:独り・老い(一) 独り・老い 関西花の寺25ケ所 第10番 摩耶山天上寺 手作り短歌集に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。 義母の手作り短歌集(一)巻に掲載された432首の内、三番目に多く(50首)が含まれるカテゴリー【独り・老い】に分類した短歌を掲載いたします。 <義母の短歌 カテゴリー:独り・老い(一巻掲載50首)> #2 会話なき一日終わりて消す灯り闇に重たき秋の雨音 #7 六人の子育てし媼脚萎えて老人ホームに臥すという哀し #14 一握りの野蕗摘みきて煮つめおりそれで事足る暮らしと思う #17 媼逝く報い少なき一代なりと葬にたつ人交ごも語る #18 八十四の媼有金盗られしと泣いて縋れり背さするの #25 髪染めて雀百までとつぶやけり残り少なき女を楽しむ #58 幼名で呼びて消えゆく六十年学舎の友皆髪白く #66 食べきれぬ魚の煮つけ蕗の葉にのせて捨て置く夜の客来て喰め #75 水は澄み雲ゆるゆると尾根をゆく旅してみたき病む膝をみる #83 合槌を打てば次第にさかのぼる老いの語りに戸惑うばかり #88 集いいる人は黄泉路の人ばかり醒めて跡方なき夢重く #89 ざるの米ひっくり返した戻り道老いても翳曳く幼の涙 #100 新しき話題の如く語り出す空で覚える老いの繰り言 #107 鉛筆を削れば薄き香の立ちて机に長夜を声なくおりぬ #117 今日のどを過ぎてゆきたるもの想う女のひとりカルシュウム零 #118 唐突に人の訃を聴く昂ぶりの中に悲しき水引き結ぶ #120 ささやかな安堵得るべく癌健診我より老ゆる人なき中に #133 誰の待つ夕餉にあらねば没り陽の中を遠出の虚しき安堵 #192 独り居に特権もある陽の入りを羽根持てる如く胸内かるやか #208 老いひとりを狙う空巣を許すまじ聞き流している警察なおに #210 賑わえる酒座を放れて座す老いの動かぬ視界にあるは空のみ #213 ざわめきの酒座を逃れて施錠するひと日の終わりこそと音する #217 施錠する玻り戸の揺れて残る世のひと日を埋める彩を思えり #228 錠外し灯りともせばよみがえる空気ひとりの温くみ寒みに #242 ぬばたまの闇に馴れゆく眼と言わん残り世の路細ぼそと見ゆ #243 酒座に居て野にある如く黙りいる妻逝かしめし男のひとり #256 灯りひとつともせるままに出でゆきぬ暗闇さぐるひとりの戻りに #264 雨の夜落ち葉を叩く紋様のワイングラスのかすかにゆらぐ #267 静けさに馴るると言えども寒ざむと雨音聴けば人を恋わしむ #288 夫逝かせひとり住む女等集いきてつましき宴の笑いに酔えり #292 吾が触れる紙と鉛筆冷蔵庫他に音なき静けさにいる #293 風船の空気の漏れる如くいてひとりの夜を平びておりぬ #301 湯豆腐に小さきパックの半分を煮たてる湯気にひとりの夕餉 #305 日の暮れに米研ぐ事をわびしみて求めしお握りみ祖に捧ぐ #307 白壁にボール投げかくごとくにも頼りなくいる口きかぬ昼 #315 只今と声に出せり闇深く応えなき家の灯りをともす #327 料理メモ誰が為にとる乱れゆく文字を丸めて篭にほる音 #340 峡の道傘さし歩む静けさに従いくるもの四つ脚でもよし #347 鳶が蛇くわえて屋根に止まるを見て鍵たしかめる女のひとり #357 客去りてひとりに広きテーブルに湯呑み二つが冷えて残れり #358 老人車押すあり水筒揚げるありゲートの老は大きく掌をふる #359 人声のしきりに恋し冷ゆる夜書読む目鏡又してもはずす #365 大根を炊けば誰かのいるような鄙びの匂い夜半までこもる #368 籠る耳かたむけており戸の外に二、三の女等さざめきゆけば #386 朝刊をひと日の始めと広げても文字を辿らぬ眼は遊びいる #390 葬り後の夫婦茶碗も寡婦となる余生の限り我が傍にあれ #397 満たされぬ雨の夕昏れいさかいの相手なければ夕餉を早め #413 オレンジのシャツが似合える老い男は脚病む老女抱きてゆけり #427 人波のあふれて孤独の街中をよるべなき身の如く歩めり #428 鉛筆と辞書に便箋反古などがもっとも我に近く住みいる <管理人のつぶやき> ■今日の歌 ビール一口 指をおる