義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:独り・老い(七)

福知山市三和町寺尾 妙見山実相寺(日蓮宗

手作り短歌集(七)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。
短歌集に掲載された266首の内、5番目のカテゴリー【独り・老い】に分類した短歌(15首)を掲載いたします。

 

<義母の短歌>カテゴリー:独り・老い

#1755    朝毎の茶湯まことに干されなばおそろしかるべし一人では住めぬ


#1756    格別に何を昂ぶることもなし竹の節にも似たるか正月


#1757    与えらるる刻はみずからゆかさねば視るともなしのドラマ三篇


#1768    物陰の器の水のごとくいて誰の邪魔にもならねばいいか


#1770    疎まるる長き体を石垣にひそめるものも孤独なるべし


#1782    果てのなき空に爆音曳きてゆく飛行機常に孤独ならずや


#1784    ひとり独楽廻れよ廻れ為すべきばそれひとつなり軸尽くるまで


#1804    水族館の魚の孤独に逢いたくて惹かれゆくなり尾鰭なきわれ


#1805    折りたたみの椅子ぱたぱたとたたまれて聞きたる事の大方忘るる


#1829    ある限りのあかりともせば人の来て何ぞあるかと問うなりひとり居


#1835    捨てられし空瓶のごとき表情のわれかと貌を再び洗う


#1888    続くものなければようやく温もりし風呂場の窓ゆ湿気を逃す


#1896    薄情な女と言うて下さるな忘れな残り世生きてはゆけぬ


#1982    詠むことも花の手入れも絵空事斯かる虚ろな刻よ疾くゆけ


#1992    起き出でて真夜に水呑む音立てるさびしきものか咎めるものなし

 

<365人の生き方>

■生きること それは自分との 戦いだ

宇津木妙子 全日本女子ソフトボール監督)