義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:自然・季節(一)

関西花の寺25ケ所 第10番 摩耶山天上寺

 

手作り短歌集に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

義母の手作り短歌集(一)巻に掲載された432首の内、四番目に多く(50首)が含まれるカテゴリー【自然・季節】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:自然・季節(一巻掲載50首)>

#1    白鷺の群れて舞い立つ秋の空友禅模様の絵を曳く如し


#9    如月の半月高く懸る道冷気の肌刺しうつむきて帰る


#10    棕梠の葉が杉木立縫う木洩れ陽に揺れているなり三月の風


#13    春雷のとどろきゆける部屋隅に叱られし童の如く座れり


#15    地を這える薄き影なり脚曳きて淡陽が中を家の門入る


#31    散弾のふりそそぐ如はじけ飛び雹音立てて地上をまろぶ


#34    初夏の陽は白く乾きて屋根に照る麦藁帽子の影も濃き今日

#36    初夏の陽にゆたに実れる小麦の穂見渡すかぎりを一彩に染める


#38    夕立の雨粒地表を走る時乾ける土が一瞬を匂う


#39    庭の雪積もりしままに黄昏れて唇重く早く戸を繰る


#63    雲裂きて走る稲妻まなうらを貫く如き瞬の戦慄


#71    半夏生白き被衣のひそとしてやんごとなき姫おしのびの絵図


#79    降り続く雨に渦巻く濁流が潜没橋を呑まんとして猛る

 

#81    天地に母ある如く柔し雨一滴残さず土に透み入る


#122    ゆるゆると廻る舞台も今し秋人も緑も衣かえゆく


#125    わくら葉の散りしく谷を流れ継ぎ陽を浴ぶ水の透きてこぼるる


#141    花蘂の中に没りゆき蜜を吸う蜂も見えざり何時しかに秋


#147    円筒の断面に似る夜半の月感情のなきまま地上を照らす


#170    吹く風のながさるるにか いずくより烈しく来たりて戸を打ちやまず


#174    夜風受けコトコトと鳴る窓ガラス夏には聞かず季深みゆく


#191    秋茄子の艶持つ紺に雪の日の毛糸をおもう肌寒き朝


#198    落柿に憩える蝶の羽根破れて終の近きか動きのにぶく


#199    草踏めば飛び立つ虫の小ささに生い立つ秋の日数足りるや


#206    川風に吹上られし花吹雪信号待つ間の虚空を踊る


#216    芒原に佇つ肩撫ずる風かそか旋律に似て耳底になる


#220    胸寒く秋雨の音ひたひたと眠れぬ夜の無聊をつつむ


#225    雲みよと子は声弾ませて我を呼ぶ見慣れし峡の夕茜雲


#246    襞深く秘めし繰り言時に吐くと誘い出させる霜月の風


#248    カレンダー剥げばうすきが壁に揺れ人重ね着をまさぐる朝


#255    侮れる秋の夕立ちのしぶきおりけぶる視界をよぎりゆきしもの


#257    耳底に啼く蝉の音のはたと止み又啼き出せば音色変われる


#259    足早に過ぎゆく秋の気配する夕暮れ刻の翳あわただし


#271    心せく何に残さん此の彩を紅葉は日毎褪せゆくものを


#287    ひとときを人の称えし紅葉の散りては芥吹き溜るまま


#304    初雪はふうわり落ちて消えゆきぬ一夜の宿も得られぬままに


#312    音もせで終のひと葉を散らすとき紅葉はすでに新芽を抱く


#341    庭に散る落ち葉カラカラ吹き溜まり窓にも季の移ろいてゆく


#346    秋深む草むら踏めばこおろぎの老いたるひとつよろばい出でる


#351    とどめたき野の草落ち葉の彩よせて色紙に残すひと掬いの秋


#354    ひた走る車に入るくる秋の風生きて味わう今日の匂いを


#355    岸と畔と境分かたぬ草もみじ黄の原茫茫と黄昏れるなか


#356    それぞれに使途あり葉陰のあばた柚子湯船に浮かす二つ三つ

#363    裸木の枝軽がると天仰ぐ縫いし錦地にかえして


#367    クルクルと渦にもまれるわくら葉を掬いて何と言うにあらねど


#376    川霧のたちまち視野けぶらせて我が佇つ地の揺らぐ錯覚


#378    燃える夏水なき石に苔とあり今青あをと軒しのぶ生う


#404    裸木は飄々と佇ち口重きもののふのごと冬を迎える


#407    驕りいし柔きくずの葉黒ずみて霜の下りしを萎へつつ語る


#430    吹き溜まる溝のわくら葉はや朽ちて裏庭さぶし冬の翳さす


#432    ありきたりの賀状したため添書きにひとりひとりの面影浮かべて

 

<管理人のつぶやき>

憲法の 記念日今年もやって来た そろそろ真面目に 考える時