カテゴリー:動植物(ニ)
手作り短歌集に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。
義母の手作り短歌集(ニ)巻に掲載された280首の内、二番目に多く(45首)が含まれるカテゴリー【動植物】分類した短歌を掲載いたします。
<義母の短歌 カテゴリー:動植物>
#436 繋がれてひとつの生きの物憂げに尾を振らぬ犬他人のわれに
#441 この鎖外せば犬は真先に何を為すかとふとも思えり
#446 国境を越えて芽生えし南瓜苗馴染み実るか日本の土に
#447 藪椿の落花に描く点々の踏み難き色に一花を拾う
#448 冬眠の醒めて陽の下の雨蛙まなこ虚ろに動くともなし
#452 彼の谷に三椏咲くと聞きしより登れぬ山の見えぬ花みる
#458 床下に野良猫するりと消え失せぬ猫には猫の先のある闇
#472 葉牡丹の紅に積む雪払いやり蕊より生きるる生気溢るる
#473 育てたる馬鈴薯にあらず徒生えの摂理に実るを堀り上ぐ感謝
#475 ワゴン車のミラーに己が姿見て遊ぶ鴉の数分を居たる
#479 乳牛の牡に生まれし宿命によろめく仔牛いずく運るる
#500 臘梅の透ける花片臈たけて剪らむとする掌にこぼれ落つ蕾
#512 ウインドの己が姿に眼を反らしこごみて探す春の花鉢
#514 孵らざる卵を抱きて瞑りおり東天紅に声なく母の日
#522 新生児いまか生まれるがに春蘭の柔毛の蕾土持ち上ぐる
#523 とみこうみ腰をかがめて見極める花びらの芯ささやき持てり
#536 自己主張するか鴉等杉の秀に異なる声に啼きたつるなり
#542 柚子花に万匹の蜂群がりて羽音の唸り棒状に落つ
#549 雨の日は押し黙りいる術なさに開き初めたる紅百合の花
#550 車より下りる足裏にかたつむり踏みたる触感曳きつつ歩む
#556 十年を花なき黄藤と思いおり咲きたる証の葵揺れており
#557 冷えびえとどくだみの咲く家の蔭しろ濁るまでの命を見守る
#559 咲く花の側よりすれば鋏持つ姿を鬼と見てをるならめ
#563 音もなく降る雨のなか紫陽花の大きにかくれ人等うごめく
#566 ささやかな木にささやかな実をつけて花咲き継げり伏見唐辛子
#568 人工の池に金魚の口あけて我が呟きを吸いてもぐりゆく
#573 旬という言葉を添えて差し出す産毛の露の乾かぬわらび
#578 三段池に番の家鴉睦み合う離るる一羽目を瞑りいる
#582 野に草を食むことのなき乳牛の物怖じもせぬ目はつぶらなり
#583 朝顔のくれない写す溜まり池うすきいのちを尾鰭がゆらす
#592 横切れる仔猫不意にふりかえる戻る巣のある確かなまなこ
#605 山葡萄の斑に実る不犯の垂れふふめば原始の酢ゆきひと粒
#625 朽葉踏む音聴き止めて振り返る人にはあらず腹を擦る猫
#630 内裏雛の簪色に山椒の赤実は揺れて雀を待てり
#644 明けきらぬ窓に鴉のしゃがれ声からすには鴉の愛のあるべし
#649 うすら陽に残る力をふり絞り咲かんとすらし花魁草なおも
#651 へだてなく太陽は輝り野良猫は手脚ほどきて眠り呆ける
#652 聞き馴れぬ獣の呻き闇をゆく応えなき人の棲む彼方にて
#656 雄を食む性癖の顎許されてかまきりの腹いよいよ太し
#661 ゆく先を持てるごとくに蜘蛛糸をつたいて垂れる雫の痛み
#662 風に撓み雨に敲かるくも糸の蜘蛛は見えずて露きららなり
#663 軒と屋根重なる狭間の真上過ぐ鈍色冬鳥はいづくともなし
#668 わくら葉の陰に丸居のわらじ虫箒の先に夢も転がる
#674 桧葉は桧の匂いの音たてて爆ぜまっとうす灰になるまで
#705 しがみつく蝉の抜け殻落とさぬようにいずれ命のなきもの乍ら
<管理人のつぶやき>
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