義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:動植物(ニ)

関西花の寺25ケ所 第13番 法金剛院

手作り短歌集に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

義母の手作り短歌集(ニ)巻に掲載された280首の内、二番目に多く(45首)が含まれるカテゴリー【動植物】分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:動植物>

#436    繋がれてひとつの生きの物憂げに尾を振らぬ犬他人のわれに


#441    この鎖外せば犬は真先に何を為すかとふとも思えり


#446    国境を越えて芽生えし南瓜苗馴染み実るか日本の土に


#447    藪椿の落花に描く点々の踏み難き色に一花を拾う


#448    冬眠の醒めて陽の下の雨蛙まなこ虚ろに動くともなし


#452    彼の谷に三椏咲くと聞きしより登れぬ山の見えぬ花みる


#458    床下に野良猫するりと消え失せぬ猫には猫の先のある闇


#472    葉牡丹の紅に積む雪払いやり蕊より生きるる生気溢るる


#473    育てたる馬鈴薯にあらず徒生えの摂理に実るを堀り上ぐ感謝


#475    ワゴン車のミラーに己が姿見て遊ぶ鴉の数分を居たる


#479    乳牛の牡に生まれし宿命によろめく仔牛いずく運るる


#500    臘梅の透ける花片臈たけて剪らむとする掌にこぼれ落つ蕾


#512    ウインドの己が姿に眼を反らしこごみて探す春の花鉢


#514    孵らざる卵を抱きて瞑りおり東天紅に声なく母の日


#522    新生児いまか生まれるがに春蘭の柔毛の蕾土持ち上ぐる


#523    とみこうみ腰をかがめて見極める花びらの芯ささやき持てり


#536    自己主張するか鴉等杉の秀に異なる声に啼きたつるなり


#542    柚子花に万匹の蜂群がりて羽音の唸り棒状に落つ


#549    雨の日は押し黙りいる術なさに開き初めたる紅百合の花


#550    車より下りる足裏にかたつむり踏みたる触感曳きつつ歩む


#556    十年を花なき黄藤と思いおり咲きたる証の葵揺れており


#557    冷えびえとどくだみの咲く家の蔭しろ濁るまでの命を見守る


#559    咲く花の側よりすれば鋏持つ姿を鬼と見てをるならめ


#563    音もなく降る雨のなか紫陽花の大きにかくれ人等うごめく


#566    ささやかな木にささやかな実をつけて花咲き継げり伏見唐辛子


#568    人工の池に金魚の口あけて我が呟きを吸いてもぐりゆく


#573    旬という言葉を添えて差し出す産毛の露の乾かぬわらび


#578    三段池に番の家鴉睦み合う離るる一羽目を瞑りいる


#582    野に草を食むことのなき乳牛の物怖じもせぬ目はつぶらなり


#583    朝顔のくれない写す溜まり池うすきいのちを尾鰭がゆらす


#592    横切れる仔猫不意にふりかえる戻る巣のある確かなまなこ


#605    山葡萄の斑に実る不犯の垂れふふめば原始の酢ゆきひと粒

 

#625    朽葉踏む音聴き止めて振り返る人にはあらず腹を擦る猫


#630    内裏雛の簪色に山椒の赤実は揺れて雀を待てり


#644    明けきらぬ窓に鴉のしゃがれ声からすには鴉の愛のあるべし


#649    うすら陽に残る力をふり絞り咲かんとすらし花魁草なおも


#651    へだてなく太陽は輝り野良猫は手脚ほどきて眠り呆ける


#652    聞き馴れぬ獣の呻き闇をゆく応えなき人の棲む彼方にて


#656    雄を食む性癖の顎許されてかまきりの腹いよいよ太し


#661    ゆく先を持てるごとくに蜘蛛糸をつたいて垂れる雫の痛み


#662    風に撓み雨に敲かるくも糸の蜘蛛は見えずて露きららなり


#663    軒と屋根重なる狭間の真上過ぐ鈍色冬鳥はいづくともなし


#668    わくら葉の陰に丸居のわらじ虫箒の先に夢も転がる


#674    桧葉は桧の匂いの音たてて爆ぜまっとうす灰になるまで


#705    しがみつく蝉の抜け殻落とさぬようにいずれ命のなきもの乍ら

 

<管理人のつぶやき>

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