義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリ:自然・季節(ニ)

関西花の寺25ケ所 第14番 興聖寺 ご朱印

 

手作り短歌集(ニ)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された280首の内、三番目に多く(33首)が含まれるカテゴリー【自然・季節】分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:自然・季節(ニ)>

#465    降りしきる雪に視界のしんとして新聞配達の足跡も消ゆ


#466    黄昏の雪を運び来啾啾と音なき夜を耳盲のごと


#467    掌に受くる雪束の間に露となり帰らぬものがお指こぼるる


#476    自らの眼が染みゆくか枯れ色の山も草木も耀よいて写る


#481    眺めやる峰のたたずみ唯ひそか四季を描きて彩は移ろう


#482    堆く掻き寄するわくら葉灰にして土に還さん緑にかえれ


#483    外灯を透かしてみれば尚寒し闇に細かき雪降り止まず


#495    霜柱踏めば崩るる音かそか消えゆくものを足裏に覚ゆ


#501    温風機切ればたちまち襲いくる寂涼に騒だつ耳底の声


#517    雪明りあつめるガラスのテーブルに細く影曳く水仙孤独


#561    梅雨晴れの厳しき照りにしとどなる汗の短駆の影を歩ます


#586    カナカナのひとしきり啼く音絶えて陽は傾けり燃えつきるがごと


#591    並び起つ若竹の葉を縫うひかり夏の青さに泪さしぐむ


#599    岩つつく鮎のひと群れ目に促う刻のゆるゆる流るる真午


#600    酔芙蓉地に落つる間のたまゆらを見たり看取りし後の悲しみ


#617    庭石の揺がざるごと頼もしくも見ゆれ魂など絶対になし


#635    じんわりと山肌滲む地下水を土の泪と寒に視つむる


#643    天を指す銀杏黄葉の真盛りにゆらめき靡く落ち葉焼く煙り


#646    せせらぎに垂るるもみぢの美しやけし冬菜を洗う媼も去れり


#647    往く先々落ち葉裸か木枯れすすき夕暗の道雨にけぶらう


#648    吹く風のうねりに身を揉むもみぢ葉のざわっーと寒く岸になだるる


#671    わくら葉をかぶれる魚も抱くならん冬の川面の蒼の窮まり


#677    山繭の淡きみどりにこもらへる刻が揺れいる冬のもみぢに


#683    日月もとどかず深く死者眠る土を犯して雨降り沈む


#688    闇のなか闇より濃ゆき庭松の翳り起たせて明日に対える


#689    頁繰るはざまの羽虫鮮明に手脚伸して冬の終焉


#690    敷妙の央地がなかに降る雪の天にし舞えばかそか彩持つ


#692    如月の天を荒びて吹く風の絞る雫か頬打つ氷雨


#693    水底に眠る小石に寝返りを打たせて湍る雪の谷川


#696    雑草に雑草の春あり魁けて犬のふぐりの泪色に咲く

 

#710    小暗きに朝刊配る自転車の軋み音凍る霜置く路に


#711    注連飾り稲穂の爆ぜるかそか音耳傾けて幸いと聴く


#712    わが丈に及べる雪摺り軒埋め白き獄舎に術なかりけり

 

<管理人のつぶやき>

■我が住む この地を何と呼ぶべきか 峡、郷、里か 単なる田舎か