義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:人・子供(六)

丹波古刹15ケ寺霊場 第4番 常勝寺

 

手作り短歌集(六)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。
短歌集に掲載された238首の内、2番目のカテゴリー【人・子供】に分類した短歌(36首)を掲載いたします。
 

<義母の短歌 カテゴリー:人・子供(六)>

#1503    居心地の良さについつい長居せり友は今頃慌ているべし


#1554    もたもたと何言い淀むわたくしの耳はせっかちも少し急げ


#1561    千円の価値は千円タレントは億の借金抱えて笑う


#1566    淋しげな女は居らず文化祭余興に甘酒うどん屋賑わう


#1572    無軌道な少女の素直さ取り戻すドラマの終焉見届けやらな


#1573    西鶴のやすらぎ知らぬひと世映すテレビの前に寂寞といる


#1574    吾が頬を双手に包みなつかしと言いしは惜しや女友達


#1578    鎌当てし傷跡多き左指我武者羅なりしよ若き農婦は


#1584    落葉踏む音のかそけさ人逝きて忘れられゆく虚しさに似て


#1587    歌の友半日私と歌攻めてお腹空かしてみませんかモシ


#1599    免許証取り立ての友祈るごと「待てば何時かは車も途切れる」


#1611    峡に見ぬ朱の染髪を帽子かと惑わせる少年の肩の薄さよ


#1612    骨折せし義弟をおのずから兄嫁の貌声もて励ます


#1616    頰被りの男ふらふら歩みいてもっと降らねば家に居られぬ


#1617    それなりにあんたも老けたと言われたりどっしり太れる婆さん小憎い


#1618    コーヒーを淹れるか淹れぬか一瞬を迷いて止める用なき客人


#1622    ある時は明るく濃ゆくあるときは靄に紛るる人間模様


#1625    ひとりごと聞かれし男己が貌つるりとなでてふっと消えたり


#1626    湯呑み置くすき間なきまで書をひろげ八十媼の学び魂はや


#1634    簡単に死ぬの逝くのと言う勿れまこと迫れば怖しき闇


#1638    金の成る木やたらと殖やす老婆いてもの言わざれば声掛けそびれる


#1640    冬田鋤く人憚りつ二度三度車走らせ傷付きしはこなた


#1647    現役の女匂える八十歳日毎異なるイヤリングの光


#1652    ありてなき人との距離感むっつりと電話器見つめ友を思えり


#1655    半日をしゃべり通してまだ足りぬ夫在る友送る夕暮れ


#1673    スーパーの軒借り過去を売る男誰ぞ買わんか古本の魂


#1684    ゆく蟻の数程喪の服集い来るスターの葬り祭り染みいる


#1694    「婆ァ抜き」「粗大ゴミ」将「濡れ落ち葉」などなどの言葉吐く人を蔑す


#1695    病院はわが別荘と妻見舞う男の抱える黄のばら数本


#1698    叩いても死なぬと言いしが呆気なく喜怒哀楽を忘れし人よ


#1709    前後不覚に酔う人いかなる世に遊ぶ暫時覗き見したくもあるか


#1712    燗徳利冷えてほろ酔う女男の群ゲートボールに上げる歓声


#1726    愚痴泪一切こぼさぬ隣人に我が苛立ちのさらに深まる


#1730    遠景に雨降る径あり無口なりし少女老いつつ華かざさむとす


#1731    冬畑をひとり黙もく打つ老いにやきたてのパンそっと差し出す


#1733    父母ありて吾が子の子が子を持つ事実生きて良かりし煙りにあらず

 

<管理人のつぶやき>

■面倒な ことほど実は 面白い いやになったら やめればいいよ

(80歳の壁から)