義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリ:暮らし・田舎(ニ)

関西花の寺25ケ所 第14番 興聖寺

 

手作り短歌集(ニ)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された280首の内、四番目に多く(25首)が含まれるカテゴリー【暮らし・田舎】分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:暮らし・田舎(ニ)>

#439    めらめらと柿の落ち葉を這う炎杳き裏切り許さんとする


#453    竹藪に囲まる峡に竿売りの生業の声虚しく過ぎぬ


#478    ひたぶるに和紙漉く人の掌の業に刻さかのぼる遥か移り夜


#484    月の径何やら駆けくる気配して動かず佇てり地の風の音


#485    班陽の庭石に揺れ風寒し人も揺れいて足早に過ぐ


#487    金銀をかすめて帰路の一服に鬼も此の水汲みしと思う


#488    此の路を鬼駆け下りしかゆく先の渓深くして茶店など無し


#494    三戸五戸小聚落のちりぢりに一戸をひらく女あるしぞ


#497    手放せるわが田のあとのひこ生えを褐色の風はげしく揺らす


#502    籠るにもほとほと飽きて冬日素手のしびれるまでを草引く


#506    Uターンの中学生がひとりゆく自転車の背に揺れる反骨


#518    引取りては貰えぬ芥の脱穀機野曝しのまま四とせを座わる


#521    農の行く先かたみに論じらるるなか存在感なく身を置きており


#529    ヘッドライトに煌めく道路息つめて濡れてしとどの狭間をかえる


#535    川隔て昼間見るなき向う家の木の間隠れの灯が呼びかける


#538    クラクション鳴らして挨拶送りくる野辺の交わりほのぼの温し


#593    此の峡に命与けて悔ゆるなし耳朶に親しき瀬音ひびきて


#594    手をあげて便乗したる軽トラックにかそかにあらぬ牛糞臭う


#598    山襞に煙りは直ぐにたちのぼり人住むことをやわやわと告ぐ


#619    野の戻り汗の肌着の冷えしるくひと足ひと足に体温奪う


#621    喜びもはた悲しみも稀まれに田の字の型の部屋ぬち平穏


#629    軍手とう名も消え残る手袋の白きに泥のなお染みており


#641    瞑る眼に己が自在の古家は累々と起つ低屋ながらに


#686    こりこりと手応えのある蕗の薹親株より摘む罪のごと摘む


#695    草の灰汁滲むTシャツを身につけてわれ一っ端の農婦に還える

 

<管理人のつぶやき>

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