義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:亡夫・夫(一)

関西花の寺25ケ所 第10番 摩耶山天上寺

手作り短歌集に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

義母の手作り短歌集(一)巻に掲載された432首の内、七番目に多く(28首)が含まれるカテゴリー【亡夫・夫】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:亡夫・夫(一巻掲載28首)>

#20    愛籠めて抱いてゆけり納骨の道に樒の白き花散る


#26    母逝きて写経せし亡父そのままに今心経写す寂しさ噛みしめ


#48    この峡に一人残して慌て者金婚式待たで逝きたる人は


#52    長月を捲まず勤めし夫逝きて我に賜える年金の泉


#54    汝よりも半日たりとも早く逝く望みし夫の早すぎる他界


#60    頼る人逝きてめぐる日かそかなり迷い子の如く闇抜けられず


#70    大海を小舟で漂う心地して櫓を漕ぐ長のひたすらに欲し


#99    宮詣り吾が名小さく祝いきぬ仲人なして幼見ぬ亡夫


#103    お守りを成田不動の神域に戴きし亡夫御利益受けず


#109    我が戒名今だ刻まぬ夫婦墓さびしからずや地下なる人は


#132    安らかに眠れと弔辞結ばれて別離の扉音なく閉まる


#137    夫婦茶碗汝も寡婦なり捨て難く余生の限り我がそばにあれ


#138    玻り一重隔ての取れぬまま別れあこがれあれば早待つ再開を


#145    稲刈る時季唯それだけに夫婦して見に行くという羨ましき


#193    刺身など好みし亡夫に喰ませたき思いしきりにはまちを捌く


#218    花ならばひととせ待てば咲くものを自ら散りし無情の葬り


#223    瀬戸大橋夫と渡らむ夢失せて醒めても居てもどうにでもよし


#279    フイルムに収め得ざりし落日をともに称える人なく佇てり


#291    夫病みて捨てし親猫子猫とも逝きしと聞きぬ病室にいて


#295    夫冬に逝かしめたれば雪の上にこぼせし泪痛く凍れり


#321    手造りのベンチ形見と置くを出し子が掛けているつぶれはせぬか


#322    逝きし面美しくあれと子の掌にて夫の頬髭剃らしめたりし


#323    死の床のうつつに「飯」にせよと言う末期となりし一匙の粥


#324    花びらに露まろばせてふく郁と手折りし菊を黄泉に参らす


#325    別れ告ぐ吾に時計を指さして口きけぬ人首振りており


#361    蜘蛛糸にかかる枯葉のクルクルと廻るを病床の窓に見ていつ


#375    耳遠き夫故大きく鐘鳴らし外出告げて後髪曳かれ


#377    渋柿を頬張るような顔をしてひとつの思い胸に収める

 

<管理人のつぶやき>

■義母いない この連休は 寂しけり