義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:風景・景色(一)

関西花の寺25ケ所 第10番 摩耶山天上寺

手作り短歌集に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

 

義母の手作り短歌集(一)巻に掲載された432首の内、八番目のカテゴリー【風景・景色】(27首)に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:風景・景色(一巻掲載27首)>

#42    幾とせを水に研がれし岩肌の過ぎ来し踏みて釣人の座す


#44    ダムの水激つ飛沫の真白くてたちまち澄めり峡の小霧に


#77    山襞の麓の緑おしわけて孵化する如く列車出でくる


#86    底知れぬ溜息一つ漏れ出でぬ永遠の住居の墓碑は哀しき


#160    雀追う案山子は見えず稲刈り跡わだち残れり足跡なくて


#185    いづくより飛び来て生えしやコスモスの茎太るまま畑荒れゆく


#230    急ぐ身の脚をとどめる戸田橋のコバルト写す蒼き流れは


#252    残照に緑彩られたる黄金雲奥処にかがやく菩薩おわすや


#253    水底の砂利に重なる紅葉の影を揺らして尾びれきらめく


#263    昼暗き峡の山岸明るめりハゼ燃え立ちて限りなき彩


#280    落日の雄大に遭い釘づけの足許染める名残りの茜


#300    家ありて所どころに防犯灯人住む事を告げてともれる


#302    まなうらに煙り吐く汽車浮かべつつ軽がる走るディーゼルをみる


#308    ビニールのハウスに黒豆干せれいて法連草も冬を休みぬ


#309    柿くわえ鴉啼かずに飛び立てり枝に揺れいる残されし赤


#314    頁繰る指しなやかにそらせいる若き患者は面あげざり


#317    せせらぎの飛沫を受けて猫柳岩のくぼみにじわり根を張る


#319    減反に驕るすすき野飛ぶ鳥の温くきねぐらも幾つかあらむ


#332    庭師来たらずおごる庭木のひと所綾なすどうだん緑にしみる


#344    朝まだき霧海原の高速を現れ消えて浮くごとき車


#362    谷川の細る岩間をひとすじの白布垂れるを描く人あり


#373    いずこさす確かな当ても持たず出て友が家に見る夕茜空


#374    豪邸もひとりの軒もへだてなく染めて茜はゆるゆる消ゆる


#387    静寂の極みに水面蒼あをと底辺に沈む芥もあるに


#406    溜まり水かめの底辺に静もりててらう陶肌露のしたたる


#408    裸木の梢の秀尖露光り朝の茜は柔く輝く


#424    訪う人の指かと思う友が家の玻りに映れる笹の葉の揺れ

 

<管理人のつぶやき>

■これからは 週休3日の世の中に 我らは今週休7日