義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:独り・老い(ニ)

関西花の寺25ケ所 第14番 興聖寺

 

手作り短歌集(ニ)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された280首の内、五番目に多く(24首)が含まれるカテゴリー【独り・老い】分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:独り・老い(ニ)>

#443    吾が棲みて子に戻れとは言い難し老いの昂ぶる事もなき峡


#496    命の火いのちの刻がぢりぢりと雨に研がれて捲きとられてゆく


#505    ゆくときの歩幅が示す衰えを見乍ら戻る雪の坂道


#510    掛け違いしボタンひとつのずれを知る「しらがに籾」の身に滲む齢


#513    ふと想う下降の終の安らぎかエスカレーターに運ばるるとき


#515    ひと組の肌着の渦の洗濯機目盛り通りの刻を動けり


#532    誘わるる如く来たりてぽつねんと座るベンチの冷え固かりき


#533    おんぶに抱っこ纏りつきし孫達が囲みて言えり「おバァちゃんちっこい」 


#539    野にありて戻りて口をひらくなし洗濯物の匂うをたたむ


#541    皇太子ご婚儀の午を墓に来て華やぎに遠くひとり草引く


#548    信楽の急須に新茶汲みをれどなにも変わらぬひとりの夕べ


#555    四分の三の人生越え来たり明日食ぶる一合をきしきしと研ぐ


#558    鋸を使いし日の宵つくづくと男手欲しく夕餉を欲らぬ


#562    つづまりはひとりの家に安らぐと雑踏ゆ戻り湯桶に流す


#571    かたつむり行きつく先を住まいとし振り向きもせずわれも独りぞ


#572    傾く樋たぎり落つ雨足のいよいよ侘し暮れてゆく軒


#576    鎌置きて腰を下ろすもひとりなり山の静寂に膝を抱くも


#595    率くものも追うものもなき我が常を奥処にたたみ野良着に替える


#603    我がともす明かりの破片窓にこぼれあるかなきかの温み地を這う


#666    ことごとく葉の散り尽くす裸木はよろうことなき老境に似る


#670    消し忘れし二燭が留守を守りいて十日振りなる窓開け放す


#672    ぐるぐると感情線は裡めぐり胃のあたりより哀しみは涌く


#673    独りにも新年は来る隣家の餅搗く音にむらぎも冴ゆる


#679    「今日はお婆ァが居らんのや」笑む老い人が華やぎてみゆ

 

<管理人のつぶやき>

振り込め詐欺 警察官も見破れず