義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:自然・季節(九)

福知山市多保市 厄除神社

 

手作り短歌集(九)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。
短歌集に掲載された228首の内、三番目のカテゴリー【自然・季節】に分類した短歌(36首)を掲載いたします。


<義母の短歌>カテゴリー:自然・季節(九)

#2379    関取のまく塩程の初雪を首はすくめつ目は喜べり


#2415    空洞を等間隔に抱く竹の直ぐなる痩身伸びきりて冬


#2429    それ以上の何にもなれない丸太ん棒象崩さず徐々に朽ちゆく


#2435    穴窪の僅かな水にも力あり洗う泥の手すべすべにする


#2448    中天に今宵師走の十三夜暗き世相をおんぼり照らす


#2449    無い袖は振れぬと師走の落葉樹風吹き抜かせ飄々と立つ


#2453    京都府北部春立つ今朝の名残り雪文字なき文を芝生にひろげる


#2454    梅一輪早飛脚のごと下枝に春を告げいる節分の昼


#2461    冬衣脱ぎ捨て土に屈みたし野の風景のひとつとなるべく


#2462    吹き溜る朽葉にかそけき音を立て終いの褥となす落椿


#2463    咲き疲れ散る外になき白蓮の花の乱れに四季の移ろい


#2466    水温む四月の蛇口全開し泥の手洗うひと日を洗う


#2472    痩畑に似合わぬ美しき羽たたむ川蝉といる挿絵のごとく


#2480    万華鏡覗く思いに仰ぎみる梢にきらめく夏の太陽


#2489    実をつけぬ枇杷の繁り葉吹き抜ける髪にやさしき秋の風の子


#2497    人界に何とし起るも平然と雲遊ばせて宇宙は無傷


#2499    行き交える人も稀なる山径のはぜのもみじの深きくれない


#2500    莟立てただ飄然と吹かれいる白木蓮に冬長からん


#2508    だるまあり六地蔵あり仔犬あり路肩に黒ずみ傾く残雪


#2517    吹く風に音色つけられ細く鳴る吊りっぱなしの春の風鈴


#2521    初夏の山成育盛りの少年の清しさ見せて膨らみ迫る


#2525    ゲートの球打ち合う歓声運び来る風をよろこぶ網戸のカーテン


#2530    思うこと此れとなき昼抱卵の雉子が気になる梅雨の長雨


#2542    肱笠の雨パラパラと降りこぼし今日も素気なく逃げる雨雲


#2543    鎌三丁研ぎ上げ明日に具え置くあの草刈らねば夏が終らぬ


#2546    留守宅の扉打つさまに茶の揚羽終りに向う花びらつづく


#2557    満ち欠けは世の常なりと闇溶かし蒼く輝く寒の半月


#2558    節毎に人には見せぬ闇を抱く青竹ばしりと雪撥ねかえす


#2561    凍てつきし根雪に泪こぼさせる天っ陽の神わが恃む神

 

#2565    春風に追われ吹かれ宙を舞う土まで届かぬ雪のはなびら


#2566    白絹を纏える三日月棘のなき光を注ぐ地の万象に


#2567    手弱女の後れ毛ほどの春風に命濃くする木瓜のくれない


#2574    ひと岸を占めるつくしに気もそぞろ摘むもつみたりバケツ一杯


#2592    八つ手の葉叩きまろべる梅雨しぐれ人の声欲る耳をくすぐる


#2601    雨のなき八月の地に衰えず緑葉ゆらす樹々の力よ


#2602    まだ若き零余子のほろほろこぼす秋草分け拾う指躍らせつ

 

 

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(山口 勉  でんかのヤマグチ社長  小さな電気屋の明るい経営術)