#121-130 飛べぬまで・・・
飛べぬまで腹太らせて充ち足りる蚊の終を打つ我が掌の動き
ゆるゆると廻る舞台も今し秋人も緑も衣かえゆく
高圧線楽譜にも似て空にあり小鳥の音符気紛れに飛ぶ
土なきに芽吹き子をもつ古馬齢の皺に明治の母を重ねる
わくら葉の散りしく谷を流れ継ぎ陽を浴ぶ水の透きてこぼるる
見つめいる外灯の闇に浮かぶもの蜘蛛ひとすじの銀糸光らす
汗拭う木陰に蜻蛉流れ飛び秋を愉しむ直ぐなる姿勢
オクラ二個胡瓜一本茄子一つ我れひとりの為もぎて帰らむ
山襞の起伏なめらに稜線伸ぶ菩薩裳裾の衣の広がり
明日去るを互いに触れずスーパーに夕餉の材を親娘で充たす