義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:動植物(三)

関西花の寺25ケ所 第15番 岩船寺

 

手作り短歌集(三)に蒐集されている短歌を、12のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された308首の内、3番目に多く(30首)含まれるカテゴリー【動植物】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:動植物(三)>

#728    被写体となりて砂丘に立つ駱駝燥けるまなこの視線を逸らす


#730    地の窪みに残る雨水濁りいてそこを世界と遊ぶ水蜘蛛


#750    猫飼わぬ吾が床下に恋猫の憚からぬ声恐れいります


#757    静けさの昼を変わらず黒き猫道を嗅ぎかぎ声なくゆけり


#759    沢蟹の屍乾ける墓碑の前此処に果てるべく来たりしは何


#762    溜糞を橋の真中に憚らぬ闇にゆらいで来たる狸は


#770    野仏の耳のあたりに翅やすめもそもそうなずく蜻蛉のまなこ


#783    せつなげに闇ふるわせて啼きめぐる恋の季節を限られて猫


#796    白き猿吾に抱かるる夢をみきいとしむものを持たずひさしき


#801    容赦なき雨に盛りを失いし牡丹挫折の彼の日に似たり


#812    保健所に連れ去られゆく三匹の捨て犬酷似の貌持ちいたり


#830    コンクリートの裂け目に萌える鶏頭の激しき紅に鋏はいれず


#836    樹下闇藍ひと色に七変化咎めなく纏えるかそけきおどろ


#842    土も木も久びさの雨むさぼりて酔うにかあらん揺れて傾く


#846    花ゆえに咲かねば終れぬ哀しさよ余りに小さき鶏頭の花


#852    滅びえの水吸い上げてなお紅しいまかこぼれんばら妖艶に


#878    おぼおぼと歩む羽子虫その羽根をもて跳びし日ありや


#896    咲く日なく枯れにし沙羅の木火に入れて灰となるまで佇ちつくしたり


#905    倶に住みしねずみ一族捕えたるこの手に干支のねずみは描けぬ


#921    哀れともたくましきとも生ごみの袋ひきずる夜の気配の


#923    拾い来し蝉殻ひとつ机の上に滅びしものも影を持つなり


#941    羽根たたみ歩む鴉の悠然とひとあしごとにうなずきにつつ


#942    彼岸花葉と花倶にある日なき斯かる厳しき愛もあるべし


#964    唐辛子の葉裏に金の卵産みし虫はいづべにゆきて果てしか


#965    鈎吊りの鮭の目玉の濁りつつ買われゆきたり一尾丸ごと


#973    風媒の野蕗萌土に根をはれり流浪の民の住みつけるがに


#984    寒からぬほどの風花無心なりもとより命の重さは持たず


#991    埋め置きて忘れし栗の実探す程鴉の頭緻密にあらず


#992    跳びたてぬまでに壁打ち障子打つ小さき命に背戸開け放つ


#1001    ひょろひょろの毒だみの花白かりき咲くべく生れし石塊がなか

 

<管理人のつぶやき>

アジサイの 10万本がそろいぶみ

舞鶴自然文化園にて