義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:暮らし・田舎(三)

関西花の寺25ケ所 第15番 岩船寺

 

手作り短歌集(三)に蒐集されている短歌を、12のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された308首の内、4番目に多く(24首)含まれるカテゴリー【暮らし・田舎】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:暮らし・田舎(三)>

#738    手袋の指先ひと日に破けたる欺く脆きものを軍手と呼べり


#739    ボロ切れになるとも土に還れざる鍬にかかりしビニールとべり


#741    焼石にも水沁むときのあらんかと衰へ知らぬ雑草に挑む


#760    栗拾う耳に記憶の甦る脱穀の音盛んなる昼


#768    もう跳べぬ翅へなへなと打ち叩く蝶のめぐりの草引き残す


#771    物置に仕舞うと積みて三日経つダンボールぐらりとも歩いては呉れぬ


#787    見の限り人影のなき野を渉り電動鋸に木を挽く聴こゆ


#789    飛行音消ぬれば戻る静けさの夜空は蒼き一枚の布


#791    行き止まりの聚落昼を眠るがの空気ゆさぶる乳牛の声


#799    雨溜める空うつうつと藪陰に小さき棟の上る槌音


#804    連休に植えられるべく水張田の粛としひかる峡のくれ昏れ


#806    ひっそりと竹の子ゆがけり村用に不参の昼を落伍者のごと


#849    年毎に祭り太鼓の音細り過疎の深みに里は病むなり


#857    雑音も雑踏もなき里住みに慣れて飛翔の夢うすれゆく


#859    穫り入れの終わりし峡田さむざむと実ることなきひこ生えの揺れ


#865    たまに来て山の空気が美味しなど三日在せし後なら聴かめ


#872    耕して土なる色を取り戻すひといろにしてこのやさしさは


#873    隠れ棲むごとくひっそり墓地浄め翳りそめたる野の怪戻る


#960    いずくにか釘打つ音ののどかなり今日日曜日の光り燦々


#962    府道逸れ余剰のごとき峽路来て胸はり言わん此処が吾が里


#968    「村おこし」意気まく声も聴かずなり柱と頼む人等も老いぬ


#970    視ゆるもの向こう山のみ目を凝らせば裸木ほんのり紅さし初むる


#1015    非農家の方はこれでと許されて喜ぶべきか集会の戻り


#1016    賽銭を投げよとのらす神はなし賽銭なくば盗みもあらじ

 

<管理人のつぶやき>

■本を読む 面白かった 久しぶり 浅田次郎の 「黒書院の六兵衛」