義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:自然・季節(三)

関西花の寺25ケ所 第15番 岩船寺

 

手作り短歌集(三)に蒐集されている短歌を、12のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された308首の内、2番目に多く(36首)含まれるカテゴリー【自然・季節】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:自然・季節(三)>

#743    六月の厨明るしほつねんと乾きがちなる俎の影


#748    昼暗き藪に真竹の折れる音陰に籠りて他界のごとし


#749    青空のいずくか裂けて降り出ずる雨詫ぶるがに土に滲みゆく 


#756    扇風機の風生温き十三時地獄の鬼も汗拭うべし


#767    咲く力咲かせる力紅梅の春待ちがての千の花粒


#769    浮き沈む杉ひと株を押し流す水の怒りと映りてやまず


#784    柚子の葉のひそかに抱く残り実に容赦もあらぬ雪ざんざ積む


#785    雪解けの畑に青む雑草も関わり持ちて我が生きはあり


#802    春の雨したたかなれば峡川の濁りにごりて底辺を見せず


#829    大らかに山は動けり照りながら夏衰えて立つ秋のかぜ


#843    なかなかに逃げては呉れぬ蛇のごとき残暑が不意に背向けたり


#847    買い置ける糧もつきたる冷蔵庫に鶏卵冷えて雨降り止まず


#850    好まれし師は黄泉の人山ぶどういたずらに熟るる秋庭さぶし


#853    過去ひとつ葬り去るがに夏衣押し入れの闇に冬を眠らす


#855    首振らす要なきひとりの扇風機所在もなげに秋のへや隅


#856    ひと夏を廻り続けて扇風機コトリ素直に箱に収まる


#867    芒原照りかげりつつひと面のもとな侘しき枯色の波


#871    狐花朽ちて丹波の霧ふかし棘も実もなく日々是好き日


#890    城跡の土見えぬまで散りしけるもみじに届くうすら木漏れ陽


#891    明日を待つ刻を埋むに長きかな洗車乾きてまだまだ昏れぬ


#893    万両の蒔かぬに数多の実を持てる梅ヶ枝がもと冬を明るむ


#894    折り紙の鶴教えよと訪い来たる寡婦に寂しき冬の長さよ


#913    まるまりて朽葉も寒さ厭うにか身を寄せ合える日向の窪み


#914    押し黙る唇のごとき冬の土盛り上げ動くはもぐらなるべし


#915    人棲みてこの静けさやささ透る冬の光りを目に掬い上ぐ


#918    戸の外は降りみふらずみ昏れやすく五臓病まねどまなぶた熱し


#928    奇妙なる安らぎもあり籠り居を人並みとなし雪降りつづく


#930    灰色の雲たたまれて降る光り雪に燦たり朗らなる昼


#940    聴くとして何も聞こえずみえもせぬうつつにぞ鳴れ冬のいかずち


#959    艶も香もなき冬の空日輪の在処もみせず昏れはじめたり


#989    蕗の薹煮つめる無垢な春の香に乾ける土のほとほと恋し


#994    白梅の芯のあたりに春生れて陽差し蒐める車体のきらら


#997    したたかに雪を降らせし冬将軍出立ちの支度まだ出来ませぬか


#1006    轢死せる獣まれなる冬なりきこの現実の奥のはかれず


#1017    肩に沁む寒さを誰に告ぐるべき雪か霜かは天の意のまま


#1019    里径に鳩の遊べる暖かさ速度落として唱う春よ来い

 

<管理人のつぶやき>

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