義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:風景・景色(七)

福知山市三和町寺尾 妙見山実相寺(日蓮宗

 

手作り短歌集(七)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。
短歌集に掲載された266首の内、4番目のカテゴリー【風景・景色】に分類した短歌(17首)を掲載いたします。

 

<義母の短歌>カテゴリー:風景・景色

#1736    夕陽いまもっとも美しく輝けり眼蓋閉じて沈むまで見ず


#1744    ポリバケツずらせば湿る円のあり己が置かれし跡をとどめて


#1815    側溝の落ち葉掻き上げ逃がしやる水は低きを指す他なくて


#1850    春の雪降るも又良し人生の引き算巧みに齢がこなす


#1891    往復の歩数千と四十歩に動くと見しもの春のぼた雪


#1906    幾とせを変わり映えせぬ庭に遣る視線の遊び長くは続かず


#1917    遠くみる稜線の向ういまははや近くて遠き故里の雲


#1929    杉の吐く白き息とも霧昇る峡ならではの景せつなかり


#1931    中天に支えもあらず照る月をわたしの外にもひとりやふたり


#1938    テレビに見る竜の落とし子可愛ゆくて丹後の海のまたぞろ恋おし


#1940    人間の通らずなりし山道は笹に権利を奪われにけり


#1945    宮福線尻尾の切れしとかけのごとちろちろトンネル抜けてはもぐる


#1950    残雪は真白でありし日を偲び差す木洩陽に身を細らせる


#1951    大いなる煙突の吐く白煙の羽衣と見ゆまで空澄みわたれり


#1952    人を焼く煙は斯くまで白からず火力発電の白煙切なし


#1974    長月に見落としいたる野仏が岸の窪みにひっそり在す


#1983    足裏に隠るる程の溜まり水空青ければ青きを映す

 

<365人の生き方>

■今やめろ やめないならば 生涯続けろ

(桂 歌丸 落語家)