#111-120 墓地に咲く・・・
墓地に咲く紫桔梗咲きつきて空の青さに旅立ちゆきしか
蹲まる汗の背中に吹き溜りシャツ孕ませて過ぎる野風は
他所ものと構えて見つめる三毛猫の光る眸と居る人待つ刻を
ラジオの楽流れる牛舎に腹這えるピンクの乳房溢れんばかり
まじろぎもせずにみつめるみどり児の瞳に我は何と写らむ
張りつきてはり戸に写る雨蛙今宵の糧を待つ指の数
今日のどを過ぎてゆきたるもの想う女のひとりカルシュウム零
唐突に人の訃を聴く昂ぶりの中に悲しき水引き結ぶ
暮れる中稲かける背を通り過ぐ装いおれば罪ある如く
ささやかな安堵得るべく癌健診我より老ゆる人なき中に