#381-390 雑草に・・・
<義母の短歌>#381-390
雑草に混じる野ぼたん際立ちて人はばからず花散らしゆく
いささかの心残して去る庭の石蕗つましく見送りくれる
柿の実の赤く熟れても人居らず夕昏れの雲の流れは早し
枯れ枝の岸をすべりて音立てる湯船に腰をうかせるもろさ
ほんのりとガラス戸染める朝茜夢見心地のうつつを醒ます
朝刊をひと日の始めと広げても文字を辿らぬ眼は遊びいる
静寂の極みに水面蒼あをと底辺に沈む芥もあるに
人影は灯に帰りゆき野に迫る闇に鴉の二声残す
大根を十本余り洗い終え今日を安らぐ極道となり
葬り後の夫婦茶碗も寡婦となる余生の限り我が傍にあれ