#231-240 掌に・・・
掌に払う秋の蚊の羽根虹の色の透きてふるえて動かずなりぬ
一薙の鎌下に散らう彼岸花紅のうす絹ひるがえるごと
子育てに面やつれするうつし絵の実母見て我は良き世に生まれる
あれこれと服を選びて無駄な刻過ごす奢りを店舗の軒に
売るとせば二束三文買うときは高き値のつく菊地に臥して
人訪わず電話のベルも鳴らぬ日の白虹寒し血の色さわぐ
ひとり旅首振る鳩のまろき眸を暫しの友に列車待つ刻
犬嫌い通じぬものか訪う度に甘える犬を遂に撫ずれり
水溜まりあわやと除けてまだ少し残る若さに一人で笑まう
秋の陽の流れに写る我が影を茫と見ている魂揺れている