義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

#611-620 聞く耳・・・

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関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺

 

<義母の短歌>#611-620

聞く耳持たねば言葉もただに音に聴く人の背かなしくてならず


羽をもて撫ずらるるごときよ独り棲む我れに寂しくなきかと問うは


遠足に人と離れて妹と貧しき弁当食みしを忘れず


饒舌の女が聴き手に廻りいて受話器置くとき溜め息を吐く


川上を見やれば亡夫が帽振りて戻り来るような空の青さに


聞き慣れる欝の字枠に収まれり飼い馴らしゆくペットの如く


庭石の揺がざるごと頼もしくも見ゆれ魂など絶対になし


派手かなと置くブラウスを同年輩の色白の女求めゆきたり


野の戻り汗の肌着の冷えしるくひと足ひと足に体温奪う


バランスの崩れて危うき一輪車ひと世の翳りを曳く軋み音

 

<管理人のおまけ>

撫(な)ず

欝(うつ)

翳(かげ)り

 

<管理人のつぶやき>

■うぐいすの 初声を聴く声小さき