義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

#701-712 信じられぬ・・・

関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺

 

<義母の短歌>#701-712

信じられぬ思い出ひとつ夫征きわれ牛使いて代掻きしこと


視力ある無上の喜び身に沁みて今日を支える本を選りつつ


朝よりの視界の跡をなぞりゆく昨日と異なる何かがある筈


表戸は施錠のままに昏れんとす天の岩戸か外より開かず


しがみつく蝉の抜け殻落とさぬようにいずれ命のなきもの乍ら


骨拾う思いよぎれり山茶花の白きひとひら掌に握りしむ


枕の上に乗せる拳に顎重ね考える葦何も浮かばず


人生は終りを知らぬひとり旅わざわざ汽車に乗らずとも良し


行事表に記すを持たず淘然と写る湯煙にうつつともなし


小暗きに朝刊配る自転車の軋み音凍る霜置く路に


注連飾り稲穂の爆ぜるかそか音耳傾けて幸いと聴く


わが丈に及べる雪摺り軒埋め白き獄舎に術なかりけり

 

<管理人のおまけ>

征(ゆ)き

選(よ)り

顎(あご)

葦(ヨシ、アシ)

淘然(とうぜん)と・・酒に酔ってうっとりする

注連(しめなわ)

 

<管理人のつぶやき>

桜花 今日もまだかと天を見る