#521-530 農の行く・・・
<義母の短歌>#521-530
農の行く先かたみに論じらるるなか存在感なく身を置きており
新生児いまか生まれるがに春蘭の柔毛の蕾土持ち上ぐる
とみこうみ腰をかがめて見極める花びらの芯ささやき持てり
枯れてゆく脈とる医師の目礼に頭蓋はしろき塊となる
夜半過ぎて逢いも久しき男の孫の大人の貌と交わす冷酒
俱にある時きざまれゆくいらだちに目醒めをうながすコーヒー匂う
此の橋をゆこか戻ろか散歩みち独りに見上ぐるたもとの桜
招かれて広き河原に石くれの瀬音聴きつつ村仕事終ゆ
ヘッドライトに煌めく道路息つめて濡れてしとどの狭間をかえる
滅多には動ぜぬドラマに泣かされて今宵はもろきひとりの女
<管理人のおまけ>
春蘭(しゅんらん)・・日本を代表するラン
とみこうみ・・あっち見たりこっち見たりすること
貌(ぼう)・・顔かたち
俱(とも)に
煌(きら)めく
<管理人のつぶやき>
■柳の芽 朝日に光る綿帽子 霜降りたかと触って見たり