義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:動植物(九)

福知山市多保市 天神社

 

手作り短歌集(九)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。
短歌集に掲載された228首の内、二番目のカテゴリー【動植物】に分類した短歌(39首)を掲載いたします。

 

<義母の短歌>カテゴリー:動植物(九)

#2394    白梅の開花うながす早咲きの姉様女房のような紅梅


#2395    いぬふぐり踏まれふまれて捻れつつ頭もたげて青く笑えり


#2396    めったには滅びませんよと去年伐りし万作ひこ芽に花咲かせい


#2402    惜しみなく花びら散らし枝伸ばす樹木は過ぎしを恋うることなく


#2403    花が皆ひと色ならばつまらない私は私の彩持ち生きん


#2410    生き力あるなら伸びよポーチュラカ我が手助けは此れまでの事


#2411    犬猫の苦手なわれの前に来てぺったり座る犬何思う


#2416    捥がれずに朽ちゆく柘榴拾わるるぎんなんいずれか人の世に似る


#2421    今日の食いまだ足りぬか夕ぐれを耳立てゆく子連れの野猫


#2422    従いて来る鴉に気の毒わが提げる生ごみ大方お茶がらなのに


#2427    可愛いとほめたからとて此れいじょう伸びて傲るな紅花苺


#2428    二度咲きのニゲラ一輪ひわひわと終りしものはなべて幻し


#2433    打ち抜かれもう走れない猪の脚ピクリ動けばわが胸どきり


#2434    山椒なら自力で生きてゆけるだろ実生の稚苗も鋭き棘持つ


#2437    跳ぶバッタ捕えそこねし三毛猫が照れくさそうに貌なでている


#2438    鼻鳴らし百合の根を掘る猪の貌思い浮かべて深く憎まず


#2439    空曇るまでに群なす雀どちひきゆく一羽の羽重からん


#2447    莟立て開きあぐねる冬のばら思い遂げよと厨の瓶に


#2452    人ならば口惜しかるべし捥がれずに草に己が身葬る柚子の実


#2458    考える象に枝にいる鴉何悟りしか「クワッ」とひと声


#2464    東風疾風春風西風象なき風に名のあり名無しの野猫


#2477    つつましく匂うと見れど合歓の花貴婦人のごと空指して咲く


#2481    夏野菜人と獣の知恵くらべ人は大方負けて嗤えり


#2482    落ちてなお象崩さぬのうぜんの花避けてよろめく夏草の径


#2487    旱魃に耐えてようやく鈴蘭のつけし実だけは突つくな鴉


#2488    真っ直ぐに伸びる杉の木好もしく見ているわれも直進型なり


#2495    色づきし実を確めてみずからを葬るごとく散る柿落葉


#2498    電線に羽休めて寒ざむと一人合点している鴉


#2509    寒中に水浴び続ける雄の鵯何を濯ぐと四たび五度び


#2515    春光りたっぷり浴びる福寿草妬ましきまで黄に輝けり


#2520    騒がれし桜花より花柄を掲げ静もる水仙いとしむ


#2524    子天狗の扇にやりたし八つ手の葉若きみどりの陽にきらめくを


#2537    恙なく羽化遂げしかと確かめる草間に転がる抜殻の背な


#2547    腹見せて踠く羽欠け黄金虫轢かるるまいぞとわがてのひらへ


#2582    知られずに花どき終えし小判草「咲きましたよ」と小判踊らす


#2584    花が木がもし物言わば此れの世の悪事失すとも住みにくからん


#2588    狂い咲く木瓜挿す空瓶よみがえり花と分け合う生きの喜び


#2603    もう誰も構ってくれないトレニアの小花を時折訪う黒揚羽


#2604    弾ける日待てるやはたまた怖るるや日に日に艶まし輝く石榴

 

<365人の生き方>

■商売の 秘訣は戻って 原点に 
(吉富 学   一蘭社長)