義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:自分・生活(五)

関西花の寺25ケ所 第22番 船宿寺

 

昨日までに、短歌集(四)に掲載された238首の短歌を、11のカテゴリーに分類し掲載しました。
 引き続き、短歌集(五)に掲載された238首の短歌を11のカテゴリーに分類し掲載していきます。


 短歌集(五)に掲載された238首の内、1番目に多く(62首)含まれるカテゴリー【自分・生活】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:自分・生活(五)>

#1260    賞味期限切れたる女夜昼を歌に命を託して明るし


#1273    愛憎は生きありてこそ燃ゆるもの愛淡あわと憎滅びたり 


#1275    山里のくらしの枠をいささかは喰み出る生きの出先は聴かれず


#1276    つと立てば予約の歌誌のさっと出る書房スバルの馴染みとなりぬ


#1284    新型のホッチキスの刃が入れられぬ機械音痴が隣へ走る


#1286    異界へのポストが欲しいかたくなに言葉とせざりし愛告ぐるべく


#1289    此の家の最後の戸主となる気配どっしり腰据え悔いなく生きん


#1294    拾い来し栗の実今日は誰が為に炊かんかなどと思うも愉し


#1301    推敲に推敲重ね毀れたる玩具離さぬ子供の様に


#1303    つばらかに自が生態を見届けん死語のことまでわが構えねど


#1311    生きてわが遂げたきことの二つ三つ成るや成らずや言葉とはせじ


#1312    出がらしの番茶ひと味物足らぬ新しき風入れんか歌に


#1321    長命と人の言うまで生きんかなさてその生きの在り方が問題


#1326    身じろがず雨の陽明りうすれゆく窓を見ていつ今思惟はなく


#1327    覚め切らぬ耳にかそけき雨音の心濡らすや故なき溜め息


#1331    真向かわねばひと枝落とすも至難なりまして瞬く歌詠むなどは


#1332    虫の音を友とし静に生くるにはいささか心熱温み残れる


#1334    われのみの出で入る表戸鍵を解き何はともあれ今日の始まり


#1338    いま少しましな眼鏡を掛けよとは言うて呉れるな好きでかけている


#1340    此の夜頃みる夢なべてやわらかし心平らにありとしなくも


#1347    クリーン作戦不参加の身のせめてもと人に知られず広場の草引く


#1348    身の程を知らず驕りし紅萩の倒伏に敢えて支えを結わず


#1351    此の時計止まりいるかと思うまでひとりに長し音なき日暮れ


#1354    日の三日親子の情を逆となし生きても見たし成らぬ夢裂く


#1355    明るき歌詠むとしすれや嘘ならむ心に従けばよれよれの歌


#1358    語り合う家族失うひとり住み増えゆく里のひとりよわれも


#1360    ひっそりと益なく害なく歌を詠むひとりのすさび刻ゆるやかに


#1367    虫の音を愉しむでもなし何待つにもあらぬ湯上がりしばし佇む


#1371    客が来るかたづけねばと焦るのみ刻の流れのやたらに速し


#1379    腰痛の友を医院に誘いて今日あるわれの生き甲斐とせり


#1381    旧姓に戻らずかにかくに生き来しぬ戻る道などある筈のなし


#1386    知らぬ土地堂々めぐりの迷い道方向音痴ののど渇き切る


#1392    梅ジュースに「いいちこ」割りて魂の浮遊なす間に眠れねむらな


#1393    旬の味しその実ほんわか噛みしめつ何時が旬やら我が生き来しの


#1394    孤立する大正生れ縁者等に大御所などと祭られている


#1402    目を閉じてあしたの予定立ててみる勢いて醒める何かあらぬか


#1413    泥滲みし一円玉にも裏表拾はむとするたまゆらの迷い


#1418    盗まれる若さ持たねど鍵かけて振りかえりみるひと日の流れ


#1423    ぎりぎりと捩れつほどけつ刻のゆく変体がなのような一日


#1427    花の名は覚えやすくてタレントの若者の顔区別がつかぬ


#1430    起きぬけの雨音何やらホッとする畑仕事の予定崩るも


#1441    脚四本踏ん張る椅子に身をあづけ死も又ひとつのロマンと思う


#1442    コスモスの乱れ傾く茎分けてぬっと貌出すだーれも居らぬ


#1451    今日生くる甲斐のありともあらずとも血を濃ゆくせん鯖の味噌炊き


#1457    少しづつひねくれてゆくわたくしを嗜めいたり平静にいて


#1463    幾そ度寝返りうてば死に近き眠りに遭えるか暁闇の窓


#1465    国政を気に病む程の智も持たず貴方任せでとにもかくにも


#1466    どのように生きても日は昇る此の身が大事守りてやらな


#1467    ひと刻を草引きむしりし跡確か小さな成果にかそけき安堵


#1468    寒わらびじねんに萌え出る山岸をにんまりひっそり人には告げず


#1470    それでもまだぼうとときめくこともあり色恋事に夢遠けれど


#1471    死者○○死者××が夢に来てわれを無視せり怒鳴りて醒めぬ


#1477    岩を打つ水がさらりとゆくように生きてゆかんかくじけるまいぞ


#1478    いかな夢今宵はみるか愉と怖れ他愛なきこと毛布が嗤う


#1482    大金は持たねど生くるに事欠かず今欲しきもの自動噴霧器


#1484    現役に生くる自負あり天邪鬼敬老会の招きに馴染めず


#1485    無防備に着衣を落とす浴室の老ゆとも女施錠を忘れず


#1487    屑豆を選り出すように消してゆく叩いて響かぬ昨日の数首


#1488    その後に何が待つかはわが知らねひとつの関門くぐらむとする


#1490    頭垂れ祈りの象瞼閉じ無明のなかを跳ぶ三十一文字


#1491    好きで登る歌の詠み坂照るにつけ曇るにつけてゆっくり参ろう


#1495    着る着ぬは二の次にして夢買いぬひらひら軽しシルクのパジャマ

 

<管理人のつぶやき>

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