義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:動植物(七)

福知山市三和町千束 大歳神社

 

手作り短歌集(七)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。
短歌集に掲載された266首の内、2番目のカテゴリー【動植物】に分類した短歌(58首)を掲載いたします。

 

<義母の短歌>カテゴリー:動植物(七)

#1742    挿し木より育ちしエゴの木高速路の設置を知らず花の季を待つ


#1749    媚びるなく振り返るなく冬野ゆく老い猫まさしくわが影宿す


#1762    朝戸繰る音に跳び立つ小鳥どち此の霜畑に何を求めて


#1763    小鳥どち千両万両みなつつけ鴉も啼けよ春遠からず


#1764    啄めと許せしものの万両の実のなき葉の揺れげにみすぼらし


#1765    何鳥の胃に収まりしか冬の陽を吸い溜め光りし千両の実は 


#1766    摘まれ来て根なし水なし菜の花の黄なるがあわれ籠に咲き充つ


#1778    除草液の雨浴びるとは露知らず同じ貌して群れ生う草の児


#1779    軒に来て何を啄む葉牡丹の葉が美味しとぞ糞垂れて跳ぶ


#1785    放たれて身に染む野性いまさらに柵ある常のよし温くとも


#1803    目の仇にされてあわれや貧乏草種残さむと春の木陰に


#1806    待ち呉れし花鉢の礼にろう梅の枝を手折りて差し出しにけり


#1810    間違っても花にはなれぬあら草が数を恃みて畑を占める


#1817    み仏も飽き給うべし水仙の他に花なき冬の花


#1821    過ぎてよりふと振り向きぬつき来たるあるかなきかのろう梅の香に


#1836    此れの世の何見て終わる春蘭か暗き木陰に蕾育くむ


#1837    跳ぶでないも少しとっくり貌見せよ鳥類図鑑無駄にさせるな


#1838    山鳩の真夜ひとしきり啼きたつを小鳩死なせし母かと思う


#1841    石蕗の重なり繁る葉に隠れでで虫いくつ往生遂げいき


#1851    石ころを拾いて詰め置く袋まで噛み破られおり生きの厳しさ


#1852    むくつけき男のごとき冬景色福寿草の芽がまだ貌見せぬ


#1855    花芽とも言えぬ膨らみ裸木の眠れる如きが知らず育む


#1858    散り初めし紅梅仰ぎ思うなり滅びなき生きあらずと読みしを


#1863    もがざりし柚子の実朽ちつつ草むらに汚れぬ粒子数多残せり


#1864    去年今年葉のみ繁れるさねかずら答えてくれぬか実のなき理


#1871    人間になりたき鴉枝ゆらし十羽十色の声を降らせり


#1872    怺え切れぬ泪のごとき露浮かせはらりこぼせし終の山茶花


#1873    零余子うましうましと読めば試食してみたくもあるか黒き粒つぶ


#1874    枯れ葉舞う軽さに跳び交う鳥の名を「菊戴き」としっかり覚ゆ


#1879    満天の星のごとくに列並める冬苺の種視つめてひとり


#1889    手に触れし鉢に溢るる花ひと株黙って戴くお許しあれな


#1892    血止め草地を縛る草引き千切る端より芽吹きゲリラのごとし


#1895    かたばみの赤く芽を吹く土分けてスゥッと引き抜く根の末端まで


#1905    疾駆なす野のなき檻の猛獣の孤独も俱に飼い慣らし得るか


#1907    物好きに橙の実をなめてみてその酢っぱさに刺されたり舌


#1910    電線に鴉の止まらぬ戻り寒咲き初めし梅蕾閉ざしぬ


#1911    横穴の乾ける土を塒とし出で入る小鳥の土色の羽根


#1913    冬と春の移ろい交錯する中を疑うとせぬ花の一心


#1916    侘助の外の椿の名は知らずいずれか美女の名を持てるらし


#1930    工事ポールに道阻まれて目に留めし木肌の芯まであかき紅梅


#1935    眼裏に黄なる花咲く薬湯の効くも効かぬもハーブの香に足る


#1939    立ち直る力の失せしアカシアに今年ばかりの花穂垂るる


#1941    花の歌読めば花咲く春畑に一足跳びにゆきて立ちたし


#1942    石楠花の莟重たげにたゆたえりルーズベルトと名は付けられて


#1947    枝たわむ沈丁花の雪払いやる後は自立に立ち上がるべし


#1953    水槽に食足り動かぬ海魚どちそれで足りるか命の自在


#1954    水槽の魚を孤独と視つめるは人間われわれの驕りならずや


#1955    海猫はいたくのどかに波みに乗り人間どもに目もくれざりき


#1965    曖昧な記憶を他所に福寿草思わぬ処に時季を忘れず


#1969    水槽の魚の目玉に見えるかと問えばかすかに瞬きにけり


#1972    植え替えて忘るるわれの目に見えて伸びいる水仙春の驚き


#1973    梢隠すひと葉も持たぬ裸木の泰然自若ゆらぐともせず


#1980    彩保つ弥生の枝の残り柚子口惜しかるべし徒に朽ちるは


#1981    幻の花となりゆく山百合を咲かせ続けるかそけき吉事


#1985    福寿草の花に足止め用忘れ蕾数える虹色の刻


#1986    みっしりと闇を抱ける藪椿弾き出すごと花首落とす


#1996    「カァー」と啼く鴉に「カァー」と応えやる鴉応えず首ふるばかり


#1998    来春は野に咲くがよい引き抜きし犬のふぐりの花をコップに

 

<365人の生き方>

■一番は 他に良かれかし と尽くすこと

(稲村和夫 京セラ名誉会長 人生で一番大切なこと)

 

<管理人のつぶやき>

■初吟を 大原様に お供えす

■初日さす 大原さまの 宮の千木 鳥来て遊べ 子らもみな来よ

(恒例の、初吟を大原神社の神殿でお供えし、初もうでのお客様にも聞いていただきました。)

奉納吟:石川丈山作「富士山」、松竹梅、山内利男作「和歌 初日さす」

    

福知山市大原 大原神社