義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

アテゴリー:暮らし・田舎(九)

福知山市多保市 厄除神社

 

 

手作り短歌集(九)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。
短歌集に掲載された228首の内、四番目のカテゴリー【暮らし・田舎】に分類した短歌(22首)を掲載いたします。


<義母の短歌>カテゴリー:暮らし・田舎(九)

#2387    集落のほぞのあたりの一軒家殷たれ隣が又遠くなる


#2397    ささ百合の群咲く山を削りゆく重機の爪をうらんでみても


#2441    声のなきメールのごとく瞬ける火星と対き合う寝ね際五分


#2442    裸木の枝がトタンの屋根なずる音の虚しさ又雨が降る


#2445    だんまりの夜のながさをにつめるごと蒟蒻コトコト煮ている寒夜


#2467    打ちかえす雨上りの畑黒々と土本来の色に輝く


#2473    止むと見て鎌砥ぐわれに今すこし憩えと降るか再びの雨


#2474    人の声よし聞かずとも鳥の声聴かぬ日はなし鳥語知りたし


#2485    盆過ぎて虚しく静もるどの部屋の襖開けてもだあれもいない


#2490    「血を少し下さい卵産むため」と鳴く蚊に容赦あらぬてのひら


#2491    喜びをひとり占めして朝まだきぎんなん拾うバケツ一杯


#2492    自を知るは自の他になしだんまりに昏れて乾ける唇熱し


#2493    此れの世の外なる声の降るごとしトタン屋根打つ暗き雨音


#2494    増水に水吠える音ひとり聴く夜長かりき時止まりしごと


#2533    ルームミラーに映りし夕陽くねくねの山路抜け来て正面にみる


#2552    朝まだき霧這う谷に鳴く鹿の声切なげなりひとりの耳に


#2554    杉の秀に西陽かかれば仕舞いどき「明日も来るよ」と鍬の柄杖に


#2555    二戸三戸人住むあかしに点る灯を闇と峡霧がすっぽり包む


#2556    愛想にかけし言葉がねぎ大根かぶらに変り届く年の瀬


#2560    五百羅漢列なり在すと思うまで路肩の残雪続く農道


#2576    童なき里に幼児の歓声と訝る耳に「あれは猿だよ」


#2591    みどり濃き列島が好き京がすき丹波山家のわが里が好き

 

<365人の生き方>

■國のため 捨てる命は 惜しからで ただ思われる 国の行く末

■風に散る 花の我が身は いとわねど 心にかかる 日の本の末

(板津忠正 知覧特攻平和会館顧問    散っていった友の詩を語り続けて)