義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:家族(ニ)

関西花の寺25ケ所 第14番 興聖寺

 

手作り短歌集(ニ)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された280首の内、九番目に多く(12首)含まれるカテゴリー【家族】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:家族(ニ)>

#461    抱かれて帰りし幼の残し置く小さな靴の静かな存在

 

#480    里に古りて残る一棟の物置へ吾が脚誘う父母の幻


#489    茶はゆるりと呑むべかりけり九十まで在りて座しいし父も然りき


#493    終駅にも似たる吾が背かかたえより旅人のごとく子等発ちてゆく


#525    夜半過ぎて逢いも久しき男の孫の大人の貌と交わす冷酒


#540    帰省せし嫁にゆだねる台所我が常ならぬ匂いの満つる


#546    気のおけぬ妹夫婦と汲む酒に纏うことなくいたく酔いたり


#581    学ばせたしと呟くごとく言い呉し俯向ける母を今も忘れず


#602    梅干しの紅にじむ白飯にたまゆら浮かぶ父の弁当


#623    電線も途切れてここより墓参道風渉る音父母の呼ぶ音


#642    此の影が我のものかやすんなりと月を背にして長きが愉し


#665    夜なべする母の占めいるひとつ灯に宿題解くも楽しかりしが

 

<管理人のつぶやき>

■通院日 今日は〇科 明日は△科

カテゴリー:時代・時(ニ)

関西花の寺25ケ所 第14番 興聖寺

 

手作り短歌集(ニ)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された280首の内、八番目に多く(13首)含まれるカテゴリー【時代・時】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:時代・時(ニ)>

#474    乙女とはまだよべざりし十三才紡ぎたる工場の窓破れしまま


#490    茄子の葉もて繭を繰り糸を引く古きを辿る刻をいとしむ


#499    常小屋に初めて視たるトーキー映写は荒木陸相の演説なりき


#503    一尺の糸も無駄なく使いたりし七十年を反古には出来ず


#509    自転車の空気はいつも抜けている納屋に置かれる古き分身


#520    戦いの日々に短き青春過ぎ流さるるごとく母となりにし


#585    手もて廻す発動機にゆく木炭車の在りし日茫々と眼裏残像


#613    遠足に人と離れて妹と貧しき弁当食みしを忘れず


#660    刃物屋の無愛想な髭親父笑わぬことが舗の看板


#698    天秤棒かたげぬ日のなき古き農思い起こせば呪いのごとし


#699    雨上がりに合羽脱ぐ間も惜しみいて田の草取る背に熱かりし太陽


#700    事ごとにおなごのくせにと怒鳴りたる舅も老いては穏やかなりし


#701    信じられぬ思い出ひとつ夫征きわれ牛使いて代掻きしこと

 

 

<管理人のつぶやき>

■村作業 話題はシカとイノシシと

カテゴリー:人・子供(ニ)

関西花の寺25ケ所 第14番 興聖寺

 

手作り短歌集(ニ)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された280首の内、七番目に多く(21首)含まれるカテゴリー【人・子供】に分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:人・子供(ニ)>

#442    指程の虫に逃げ出す幼子が靴音たてて蟻追いまわす


#543    からすの芋鴉の豌豆からす瓜嫌な鴉に人らは近き


#554    夜の更けに無言電話かけてくる侘しき人よガム噛むらしき


#560    燃えぬ芥捨てて帰るさ行交える人も独り居小さき袋


#579    懸命に手話にて語る人に対いうなずく女のやわらかき笑み


#580    桃食べに来よという友は乳癌の手術なせりとさりげなく言う


#587    Tシャツの赤さが広場に浮きたちてひとり鞠蹴る峡の少年


#604    下校の児乗せやればはなやぐ第一声「オバちゃん運転うまいね」 


#607    花柄のシャツの少年髪赤くむなしきままに空缶を蹴る


#611    聞く耳持たねば言葉もただに音に聴く人の背かなしくてならず


#616    聞き慣れる欝の字枠に収まれり飼い馴らしゆくペットの如く


#622    人は皆いづくを指すや渋滞のなかのひとりに我が行く方も


#628    待つのみの古きおみなを連想す直立のまま黄ばむ半夏生


#637    ピエロ役こなしてわれの人前にほがらほがらとやがて寂しく


#638    たくましき男等画面を闊歩する刑事ドラマのひとりを視つむ


#639    みどり児は母の腕にビードロの柔き唇溶けて眠れる


#653    争いて尖れる声もややに笑む独りにあらぬ若夫婦の会話


#658    夕茜とどかぬ芒の陰に居て畑打つ翁は明治生まれなり


#685    過去持たぬみどり児何を夢みるか笑まう唇によだれの透りて


#694    丸木橋渡る童は風の子吹かるるごと枯れ野に消ゆる


#697    かたつむりにマッチの箱を曳かせては玩具なき子を遊ばせたし

 

 

<管理人のつぶやき>

■ロシアでは 物価上昇18%

カテゴリー:風景・景色(ニ)

関西花の寺25ケ所 第14番 興聖寺

 

手作り短歌集(ニ)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された280首の内、六番目に多く(22首)が含まれるカテゴリー【風景・景色】分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:風景・景色(ニ)>

#434    夜をこめて雪婆地上を浄めたり此の煌きを猫も走るな


#437    月と我声なくむきあう丑満刻おどろの夜気が影を貫く


#455    臥す虎の姿に似たる奇岩石夜毎せせらぎを干すにあらずか


#456    昼と夜の狭間の山に風もなし刻止まるがに樹木の動かぬ


#457    渦捲ける底いに静寂のありと言う身の揺れるまま揺れて佇ちおり


#469    流れゆく雲を写せる潦おさなの投げる石に砕ける


#486    古ゆ蒼き流れに研がれ来て角ある岩の見えぬ二瀬川


#491    川岸の拓かれて陽を浴ぶ幾つ岩なかに寄りあう夫婦岩あり


#492    水底に尺余すなる大鯰ゆらり影曳く寒中の泳


#498    にわたずみ濁れるままに写しいる立看板のそよろの濁り


#519    ひといろに枯れ葦すだれとたつ河原煩悩払う石塊のなか


#527    此の橋をゆこか戻ろか散歩みち独りに見上ぐるたもとの桜


#551    二瀬川に脚濯ぎたる鬼の子もあるべししんしんと渓流は澄む


#552    杉の秀に昼蛍かと光る露こえ登りくる天の岩戸に


#553    谷深き天の岩戸に人声のたちてさざめく泉ならなくに


#577    出口なき洞に吹き溜まる風の息わくら葉ひとつ陽の隅にあり


#588    燃えつきる生木の燠の赤々と亡びゆくもの夕闇にしるき


#632    吹く風のうねりに生るる彩山の折り伏し川を越えて迫り来


#634    うるおえる花も実もなき家裏にも季はあるなり落ち葉掃き寄せる


#664    戻り来て峡に仰げる月親し椿静けく凍らんとする


#682    目に馴染みの山を見上げ五十年やさしきものはことばを持たず


#687    昏れ際の水面きららに活きづきてうねり昴まる流れ膨らむ

 

<管理人のつぶやき>

■老人会 健康マージャン再開す

 

カテゴリー:独り・老い(ニ)

関西花の寺25ケ所 第14番 興聖寺

 

手作り短歌集(ニ)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。

短歌集に掲載された280首の内、五番目に多く(24首)が含まれるカテゴリー【独り・老い】分類した短歌を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:独り・老い(ニ)>

#443    吾が棲みて子に戻れとは言い難し老いの昂ぶる事もなき峡


#496    命の火いのちの刻がぢりぢりと雨に研がれて捲きとられてゆく


#505    ゆくときの歩幅が示す衰えを見乍ら戻る雪の坂道


#510    掛け違いしボタンひとつのずれを知る「しらがに籾」の身に滲む齢


#513    ふと想う下降の終の安らぎかエスカレーターに運ばるるとき


#515    ひと組の肌着の渦の洗濯機目盛り通りの刻を動けり


#532    誘わるる如く来たりてぽつねんと座るベンチの冷え固かりき


#533    おんぶに抱っこ纏りつきし孫達が囲みて言えり「おバァちゃんちっこい」 


#539    野にありて戻りて口をひらくなし洗濯物の匂うをたたむ


#541    皇太子ご婚儀の午を墓に来て華やぎに遠くひとり草引く


#548    信楽の急須に新茶汲みをれどなにも変わらぬひとりの夕べ


#555    四分の三の人生越え来たり明日食ぶる一合をきしきしと研ぐ


#558    鋸を使いし日の宵つくづくと男手欲しく夕餉を欲らぬ


#562    つづまりはひとりの家に安らぐと雑踏ゆ戻り湯桶に流す


#571    かたつむり行きつく先を住まいとし振り向きもせずわれも独りぞ


#572    傾く樋たぎり落つ雨足のいよいよ侘し暮れてゆく軒


#576    鎌置きて腰を下ろすもひとりなり山の静寂に膝を抱くも


#595    率くものも追うものもなき我が常を奥処にたたみ野良着に替える


#603    我がともす明かりの破片窓にこぼれあるかなきかの温み地を這う


#666    ことごとく葉の散り尽くす裸木はよろうことなき老境に似る


#670    消し忘れし二燭が留守を守りいて十日振りなる窓開け放す


#672    ぐるぐると感情線は裡めぐり胃のあたりより哀しみは涌く


#673    独りにも新年は来る隣家の餅搗く音にむらぎも冴ゆる


#679    「今日はお婆ァが居らんのや」笑む老い人が華やぎてみゆ

 

<管理人のつぶやき>

振り込め詐欺 警察官も見破れず