義母の短歌

98歳で永眠した義母が書き残した短歌です

カテゴリー:時代・時(六)

丹波古刹15ケ寺霊場 第5番 石龕寺

 

手作り短歌集(六)に蒐集されている短歌を、11のカテゴリーに分類いたしました。
短歌集に掲載された238首の内、5番目のカテゴリー【時代・時】に分類した短歌(20)を掲載いたします。

 

<義母の短歌 カテゴリー:時代・時(六)>

#1501    スーパーに荷物を提げる男達当然と思わぬ古さ嗤うな


#1511    食べ終えし寿司殻前にいたずらに寂しむ峠越えて久しき


#1512    うつつには無き生れ家に物言わぬ父母いて囲炉裏燻りたり


#1520    前の世は海の魚族にあらざるか塩分濃ゆきをことさら好む


#1533    十中の八まで渋き今年柿世の中そんなものかも知れぬ


#1537    容赦なく家財道具を埋めたてる業者よ胸に痛みあらぬか


#1545    夢のなき農家のくらしに戸惑いしは十九の花嫁なりし


#1546    味噌汁に豆腐を入れることすらも贅沢などとは知らで嫁ぎ来し


#1547    木尻座と呼ぶ嫁の座のけむったさ昔語りの笑えぬひとこま


#1567    文化祭図体のみに場を占める馬鹿南瓜に目もくれやらず


#1579    現実を揺るがすまでの力なし過去は造花の臭いを放つ


#1591    幼日にわが持ちいたる羽子板の押し絵の姫は何処にゆきしか


#1606    新世紀に期待も不安もさらに無く結局無知という他はなし


#1690    芒穂の揺るるをみても涙腺のゆるびし頃はも絵の如く浮かぶ


#1707    不景気の波をまともに被りいる若き世代のくらしも厳し


#1708    巻き戻しの利かぬ歳月稼ぎし日履きたる利久の黒漆光る


#1716    はたとせの昔の忙しさ思い出で疲れ覚ゆる師走の曇天


#1717    紐ひきてひと呼吸置きともりいず蛍光灯の古きを愛す


#1721    昔むかしわが欲しかりし腕時計今幾つ持つとて埋められぬ洞


#1724    三歳児の耳愉しませしラッパの音抑揚のある「玄米パンのほやほーや」

 

<管理人のつぶやき>

■ゆっくりと 気の向くままに 今日を生きる(80歳の壁から)